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(3) 問題の発生時期と解決結果

地方公共団体における調達契約手続には、一般に入札公告から始まって契約締結に至るまで、入札公告→入札参加資格の審査→入札→落札者決定→仮契約→議会の議決→契約締結といった一連の流れがある。この一連の調達契約手続において、どのようなタイミングで政府調達協定上の問題点が指摘され、最終的にどのような形で問題の解決が図られたのか、図表2-5の事例を整理すると、次のように類型化できる。

類型1]:入札公告のやり直しに至った事例(D・J・K県を除くすべての事例)

これは、入札公告を行ってから入札が実施されるまでの間に、入札参加資格が過度に制限的である等の理由により、入札公告の内容が政府調達協定に抵触する等の指摘がなされたケースである。図表2-5に掲げた事例においては、指摘を受けた発注機関が協定の趣旨を踏まえて再検討した結果、外国政府等の指摘を受け入れ、入札公告のやり直しや一部変更を行うことによって問題が解決されている。

類型2]:契約締結議案の撤回、入札のやり直しに至った事例(D県の事例)

これは、入札を実施し、落札者と仮契約を締結し、議会に契約締結議案を提出した段階において、発注内容が政府調達協定に抵触するとの指摘がなされたケースである。D県においては、協定上の問題点の指摘を受け、外務省や自治省(現総務省)とも協議し、発注内容と協定の関係を再検討した結果、協定に抵触する可能性があることを認識し、議会に提出していた議案を取り下げ、仮契約を解除し、入札をやり直すことによって問題が解決されている。

類型3]:契約締結議案の否決、入札のやり直しに至った事例(J県の事例)

これは、発注機関が政府調達協定の手続を遵守して適正に入札を実施し、落札者と仮契約を締結し、議会に契約締結議案を提出したにもかかわらず、県議会が契約締結議案を否決したというケースである。J県においては、県議会において議案が否決されたことを受け、再度、協定の手続を遵守して適正な入札を実施した。入札をやり直した結果、議会が契約締結議案を可決したため、問題は解決されている。

 

(4) 協定上の問題発生事由

地方公共団体の調達案件に対して政府調達協定上の問題点が指摘される場合、具体的に協定のどの条項との関係で問題が指摘されるのか、図表2-5の事例を整理すると次のように類型化できる。

 

ア 協定第3条にかかる事例(A県の事例)

〔概要〕

A県は、スタジアム建設工事を行うにあたり、地元企業の振興を図るため、建設工事請負契約締結時に受注者に交付する工事施工上の指示事項の中で、「下請業者を使用し工事を施工させる場合には、県内業者を優先して下請させるよう努めること」、「県発注工事の施工に当たって、建設資材は極力県内生産品を使用するよう努めること」と定めて入札を実施しようとしたところ、政府調達協定上の問題点が指摘された。

そこで、A県は、指摘を踏まえて検討を行い、当該指示事項を削除した。

〔問題の所在〕

本事例の場合、工事施工上の指示事項の中で、下請工事の発注や資材購入の選定における地元企業・産品活用努力義務を課しているが、当該指示事項は、協定第1条第3項が規定する「企業が締結する契約について特定の要件に従ったものであることを求める場合」に該当し、協定第3条(内国民待遇及び無差別待遇)の規定が準用される。

そこで、地元企業・産品活用努力義務が協定第1条第3項により準用される協定第3条が規定する内国民待遇及び無差別待遇の原則との関係で問題が指摘された。

 

 

 

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