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このうち、特に公共性が強調されるのは、行政的性格の強い分野(例:病院事業における救急医療、保健衛生、水道事業における消火栓)と不採算分野(バスの不採算路線)であり、これらの分野については、独立採算によらず、一般会計からの繰出を認めても良いと考えられるが、前者(行政的性格の強い分野)については、今後引き続き公営企業の中で行っていくのか、それとも一般行政として行っていくのかという検討が、後者(不採算分野)については、今後引き続き公営企業の中で行っていくのか、一般行政として行っていくのか、あるいは補助金を交付することを条件に民間に委ねるのかという検討が必要になってくると思われる。

一方、独立採算が成り立つような分野については、公営企業の民営化を行っていくべきなのか、あるいはイコールフッティングの確保を前提に、公・民の競争による住民へのより良い選択の機会の提供を目指して公営企業を維持すべきなのかという検討が必要になってくる。

ただし、イコールフッティングについては、現時点では、これが確保されていないとの指摘がなされることが多い。その論拠の1つとして取り上げられるのが一般会計等からの繰出(地方公営企業法第17条の2第1項、第17条の3)、出資(同法第18条第1項)及び長期貸付け(同法第18条の2)である。イコールフッティングの実現のためには、一般会計等による負担の範囲と、独立採算によるべき範囲とを明確化し、住民に十分な情報公開を行うことが必要であり、いやしくも安易に繰出を行うことによって赤字を補てんするということがあってはならない。

なお、独立採算が成り立つような分野について、公営企業においては、経営状況に応じた柔軟な給与設定が困難な状況にあるということにも留意すべきである。すなわち、公営企業法の組織身分関係規定が適用される公営企業の職員の給与は、同法において、生計費、国家公務員、地方公務員及び民間の給与、当該公営企業の経営状況等を考慮して定めることとされており(同法第38条第3項)、法律上は経営状況を給与に反映することが可能となっているが、実際には、当該地方公共団体の一般行政職員の給与を基準として条例により定められていることが多い。また、公営企業法の組織身分関係規定が適用されない公営企業の職員の給与については、地方公務員法が適用され、一般行政職員と同じ給与規程によって定められるということになる。

 

 

 

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