(参考) オンブズマン制度
オンブズマン(ombudsman)は「代理人」、「代弁者」という意味を持つスウェーデン語である。1809年、スウェーデンに世界で初めて設置された「議会オンブズマン」の仕事は、議会に代わって行政機関を監督し、国民の権利を「行政過誤」から救済することにあった。第二次大戦後、消費者オンブズマン、男女雇用機会均等オンブズマンなど6種類のオンブズマンが存在している。スウェーデンのオンブズマンは、調査権と訓戒・訓告権という2つの大きな権限を持つ。スウェーデンのオンブズマンは政府から任命される役職でありながら、独立性が保障されている。
例えば、障害者オンブズマンは、「障害者オンブズマン法」(1994)に基づき、障害のある人の権利や利益を擁護する機関で、1994年に設置された。障害者オンブズマンは、政府(社会庁)によって任命され、「機能障害者の諸権利と利益に関する問題を監視する任務を持ち」、「機能障害者にとって完全な社会参加と生活条件の平等を実現すること」(LH第1条)を目指し、任務にあたる。
エ 障害者の権利擁護システムのモデル
図表2-1は、スウェーデンにおける高齢者障害者を含む障害者の権利擁護システムのモデルであり、人に対する公共サービスの質を確保するモデルともなり得ると考えられる。
このモデルでは、中心に障害者が位置し、障害者の自立生活を支える者として、ケアワーカー及び後見人がいて、コンタクトパーソン(障害者の相談相手になるような者)が周囲に存在している。
こうした体制の下、サービスの質を維持していくためには、権利擁護の視点が必要である。現在、我が国では、介護相談員(ケアマネジャー)に関する事業を開始して、地域で市民オンブズマンを育成していこうという流れがあるが、それだけではなく、より重層的な権利擁護の仕組みが必要でないかと考えられる。
具体的には、図表2-1の中にあるような司法行政裁判又は行政措置に対する不服申立て、NPOが活発に活動することによるチェック機能、事業計画の策定委員会等への当事者の参加、行政によるサービス評価、職員組合や他のケアワーカーによるチェック機能といったものが挙げられる。
このうち、行政によるサービス評価について、スウェーデンの例を見ると、スウェーデンでは、介護サービスが地方公共団体の直営から多様な事業者による提供に移行するという状況の中で、行政によるサービス評価が重要な役割を果たしている。同国では、行政による評価システムの目的は、「公的に行われる高齢者福祉において、利用者が質の高いサービスを確実に享受すること」とされ、市連合会が、介護サービスの評価基準のモデルを作成し、地方公共団体がリーダーシップをとって、介護サービスの質を確保することを提案している。