しかしながら、これらの問題は、十分意思疎通を行っていれば回避できるものであり、両者は根本的な対立関係にはない、むしろ、役割分担の上に立って連携・協力することによって、地域社会にとってより良い成果をもたらすことが可能となるものと考えられる。その際には、地方公共団体(特に市町村)は、両者のコーディネーターとしての役割を果たすことが期待される。
[NPOと自治会等が協力しているケース]
東京都世田谷区のNPO法人「玉川まちづくりハウス」は、自治会に対して、地域に密着した活動を行いたいという働きかけを行い、また、町内会長に理事になってもらい、まちづくり協議会の運営や広報活動等で、地域住民のまちづくり活動を支援している。
大阪府吹田市のNPO「すいた市民環境会議」は、自治会が行う地区公民館の行事である自然教室等の講師を引き受けている。
[自治会等が有志を募り自治会活動と切り離した形でNPO活動を行っているケース]
群馬県前橋市のNPO法員「広瀬サンポート」は、広瀬町3丁目自治会が母体となって発足し、高齢者への給食サービスや児童文庫の運営を行っている。(自治会活動と位置づけると参加を強いることとなり、不満が出て長続きしないという理由から自治会と切り離した。)
(3) NPOの意義
今日、NPO(特に2(1)3]のNPO)には大きな期待が寄せられているところであるが、前述のとおり、諸外国からみれば、既存の社団法人、財団法人、協同組合等もNPOの一種であり、日本には既に多数のNPOが存在することになる。こうした状況に照らせば、NPO(特に2(1)3]のNPO)に対して現在寄せられている期待は過剰な面がある可能性も否定できない。
しかしながら、NPOに意味がないわけでは決してなく、以下の面からみて、重要な役割を有するものと評価できる。
まず、国・地方を通じた財政難の中で、公的部門の担う事務は一定の範囲に限定されざるを得なくなっており、この傾向は今後一層強まるものと考えられる。この結果、公的部門によるサービスから漏れた事務については、地域社会が担わざるを得ない。その主要な担い手として、これまでのところ自治会・町内会がまず挙げられるが、前述のとおり、その活動内容は交通安全、防犯、防災、清掃といった定型的なものに傾きがちである。この枠からはみ出すような新しい分野(例えば子育て支援など)に積極的創造的に取り組むNPO(専門家型・地域活動型とも)が数多く登場してくることが今後期待される。