海・漁業体験教室は、海を舞台とする新しい秩序づくりでもある。これまで海・漁業の世界はプロだけに許される世界であった場所に、海での経験や体験が全くない一般の人達を対象にした新たな職場づくり、地域振興事業を創設していこうという事業である。これは一面、プロのなかにアマの混在した世界ができることでもある。そのため単にプログラムを作り、参加者を呼んで、案内をするというだけの単純な事業ではなりたたない。特に自然相手にやってきた漁業者が、不特定多数で初対面の人達を相手に指導(ガイド)をしていくことは、大きな方向転換を実践しようとするものであり、色々な難題が想定できる。しかも現実には、それ以上のものがあることも予想される。
しかし、これまでにも長崎県若松町のトムソーヤ学校などを始め各地に経験者がいる。そこでこうした人達の指導、協力を得ながら対処していくことも一考すべきである。
同時に、地域資源を再評価し、新たな魅力づけを行って、従来オフシーズンと言われてきた時期に参加者を呼び込むことで、募集の平準化を図る事が重要であることはいうまでもないが、地域住民や研究者と一緒になって、新たな海の秩序づくりと活用を図ることでもある。こうしたことから本事業を成功理に導き、軌道に乗せるためには、モニターの実践やあわせて活動に対するチェック項目を設けることが大切である。
II 取り組む手順とチェックポイント
どのような事業においてもコンセプトが大切であるが、本事業においては、多くの関係者の同意を得なければならないことから、このコンセプトづくりが基本となることはいうまでもない。
コンセプト作りにおけるチェック事項は、以下の通りである。
1] コンセプトを具体的、明確化(地域資源をニーズに合わせて有効活用する)する。
2] 環境問題に関する世論やレジャーの状態など、社会のトレンドやニーズを反映したコンセプトとする。
3] 本事業を取り入れた初期の考え方や目的に合致させる。
4] 町や集落の持つイメージや雰囲気と調和したコンセプト設定とする。
5] 参加者と比較して、地域における資源現状から無理のないコンセプトとする。
6] 地域住民や漁協の目標及び意向を反映したコンセプトとする。
7] 各地域の特色を生かした魅力あるプログラムを開発する。
8] 参加者が増えるような地域の活性化に結びつける。
9] 自然環境の保全、伝統文化の保存、さらに海・水産業などの啓発促進に結びつける。
10] 計画の対象範囲が、特定の場所や関係者のみに片寄ったものとしない。
11] 惰性的なプログラムとしない。地域独自のプログラムや先進地事例での取り組みなどを学び、常に新鮮な取り組みとする。
また取り組み計画については、以下のようなことをチェックする必要がある。
1] 初期的段階では、行政からの支援策を引き出すよう検討する。
2] 目標像の検討や課題の抽出などが、みんなの意見として検討されたか否か。
3] 資源調査や人材の発掘及び実施状況が、公平かつオープンであるか。