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すなわち、総額だけでみると、市町村税収入の増加だけで、義務教育教職員の給与費はまかなわれることになる。ただし、個々の市町村毎にどうなるのか、また、そこまでいかなくても、大都市、中核市、特例市、その他の市および町村というように分けた場合にどうなるのかについては、手元に資料がないので算定できない。市町村によっては、かかる税収入増によってかかる給与費を支出してなお余りあるところもあり、また、かかる税収入増だけでは足りないところもでてくるであろうが、後者の場合には、地方交付税によって補われるべきものである。

(なお、このような経費負担の変更及び税源の再配分によって地方交付税にどのような影響がでてくるかという点については、現在の地方交付税における基準財政収入額の枠組を変えないとすると、交付団体である市町村については、交付税収入が5%増えるとともに増加する道府県民税収額の25%は留保財源が増えることになる。一方、道府県にとっては、給与費に当てられるとして交付された地方交付税収入は、給与費を負担しないことになったので当然減少するとともに、道府県民税収入の20%にあたる留保財源も失われる。)

以上は、「住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体が行う」という今回の地方分権時代における市町村優先の考え、行政責任明確化の考え、税目専属の考えを義務教育職員給与費にあてはめたらどうなるかを示したものであるが、このような考えは、生活保護費、保健衛生費、社会福祉費等にもあてはめることができ、更にそれに応じた税源の再配分論議をすることができると思われる。(従って、道府県民税を市町村民税に吸収統合しても、税収が余る市町村が多くでてくるわけではなく、むしろ他の税源も更に市町村に移譲しなければならない可能性の方が高い。)

2] 不動産取得税について

昭和29年度の地方税制の改正において、道府県の法定普通税として導入された流通税である。平成10年度決算では、道府県税総額の4.1%、6,348億円であり、決して大きな割合ではない。

不動産の取得という行為には一般的にその背後に担税力があると推認されこの担税力に着目して課税される流通税であると説明されている。地方税としての流通税の課税理由や個々の税目の性格については種々の議論がなされうる。

 

 

 

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