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しからばどうしたらいいのかを考えた場合には、その裏付けとなる市町村に対する財源保障は、やはり、市町村税源の充実・確保をいかに図るかが最重要課題になる。そして、市町村税源だけではどうしても不足する場合、また、市町村間の経済力の格差、ひいては財政力の格差を是正するために、市町村税源を補完するものとして、一般財源である地方交付税によるのが望ましいと考えられる。

市町村税源の充実・確保の方策については、国税・地方税を通じた全租税体系の中で考えられるべきであることはもちろんであるが、国税から地方税への税源移譲については様々な提言がなされているので、本稿では、現行の道府県税と市町村税の税体系の中での税源の再配分を中心に、役割分担原則と行政責任明確化原則に沿うためにはどうしたらいいのかについて検討することとしたい。

 

5. 義務教育職員給与費をめぐる道府県と市町村間の税源の再配分について

(1) 地方税制における応益原則の重要性

地方税制においても、租税に関する一般的原則である応能原則が中心となるべきはもちろんであり、個人住民税の所得割の税率についてゆるやかではあるが累進制がとりいれられているのはその代表的な例である。しかし、一面、地方税については、応能原則を中心としながらも、国税の場合に比し、応益原則をより強く加味する必要がある。なぜならば、地方税論議の中で特に重要と思われるのが税収入と経費支出の乖離の問題であるからである。つまり、受益と負担の差がひろがったままになっていると、いわゆる財政錯覚が生じ、適正な税負担水準にならなくなるとともに、住民の行政に対する依存心をふくらませることになり、そこに非効率を生じさせる結果になる。

地方税の充実策については、地方税源の「安定性」、「普遍性」、「弾力性」を備えたものが求められているといわれるが、受益と負担が対応することによって行政責任の明確化ないし一元化が果たされ、ひいては地方税源に求められるこれらの目的も実現されると考えられる。

この観点から現行の道府県税と市町村税の体系を眺めると、それぞれの税目の性質等に従ってもう一度再配分した方がいいのではないかという考え方がでてくるとともにそれぞれの税目の課税標準や税率のあり方、さらには法定税目と法定外税目の区分(従って地方交付税の基準財政収入額の算定対象となる税目かどうかの区分)についても改正される必要がでてくるものと思われる。

 

 

 

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