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確かに、今回の地方分権一括法によって、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第49条は削除され、市町村教育委員会所管の学校等に係る組織編制、教育課程、教材の取り扱いその他学校等の管理運営の基本的事項について、都道府県教育委員会が持っていた基準の設定権は無くなった。また、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律第5条も改正され、従来、市町村教育委員会は、毎学年、学級編成について、あらかじめ都道府県教育委員会の認可を受けなければならない、とされていたが、「認可」ではなく、「同意」を得なければならない「協議」に改められた。

このような法律改正がなされたにもかかわらず、市町村教育委員会の学級編成の決定や都道府県教育委員会の教職員定数の決定に関する基本的な枠組みは、国が義務育費国庫負担を決めるにあたって国が決める学級編成ひいては教職員総数の標準に基づいて算定されるという点が変わっていないが故に、地方公共団体の自主性、自立性を大きく制約する結果になっており、その結果、教育の地方分権は、中途半端な形に終わっているのである。

しかも、ここで留意しておきたいのは、今回の分権改革は、市町村優先主義を基本的な考え方にするものではなかった点である。すなわち、都道府県主義に置き換わったにすぎないともいえる。なぜならば、教育行政分野での機関委任事務の廃止に伴う権限移譲や自治事務化の多くは、都道府県教育委員会にとどまるのが大半で、市町村教育委員会への権限移譲は、極めて限られたままになっているのである。これでは、教育行政の分権化といっても、国に代わって都道府県が実質的には市町村の上位団体となったという批判が出てくるのもやむを得ない。

(2) 今回の地方分権における役割分担の基本理念を徹底させ、しかも、行政責任明確化原則を合わせて考えると、行政責任に関する二重責任や二重利害説といった考え方は排除されるべきということになる。しかも、義務教育行政についてはその事務処理の権限、責任は基本的には市町村(教育委員会)に与えられるべきであるということになる。(従って、小中学校の学級編制や教職員の配置についても、市町村教育委員会の裁量に委ねるべきということになる。)

しかしながら、この考え方を貫くためには、その経費についても市町村が負担するべきであるということになるが、給与費を含む義務教育費は市町村財政にとって大きなウェイトを占める。市町村にその財源をどのような形で保障するかによっては、市町村責任といっても形式的なものになってしまう。

 

 

 

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