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また、観念的に、義務教育については、国は地方と同等の利害関係をもち、また、責任をもつという前提をとる以上国、地方の負担は本来同等であるべきはずであるという考え方があったのである。さらに、法制上からみても、小学校教員の任免は道府県知事が行い、その俸給は市町村が負担するということは矛盾すると考えられたからである。

この教員俸給の道府県移管に伴って、市町村財政は実質的にも大幅に改善されることになったので、道府県と市町村との間において財源の調整が行われた。すなわち、歳出の必要に応じて無制限に課税ができた戸数割は廃止され、その代わりとして新しく住民税が設けられ、これを道府県と市町村とで分かち合うことになったのであるが、これには一戸当たりの制限額が定められることになった。

ただ、以上のような制度改正に当たっては、六大都市には強い反対があったことを附言しておかなければならない。

(8) 昭和23年、「地方財政法」の制定

その事務の執行による利害の帰属するところに従って国費、地方費の負担区分を決めていくという考え方がこの法律の制定によって初めて法律上統一的に明確にされた。

(9) 昭和24年、「シャウプ勧告」

行政責任明確化の原則に立って、これまでの経費負担区分論が否定された。シャウプ勧告の基本となる考え方は、1]各種の事務事業は、国、都道府県、市町村の段階の事務事業として責任を明確化すべきであること、2]事務事業の執行に要する経費は、責任を有する行政主体が全額負担すべきであり、そのための財源は各行政主体に独立して与えられるべきであること、3]従って、ある行政事務について国と地方公共団体が責任を分担し合うような仕組みは行政責任が不明確になるため極力避けられなければならないこと、4]そして、地方公共団体の財源が独立財源のみでは不足する場合は、地方財政平衡交付金によって一般財源を付与すべきであること、というものであった。

(10) 昭和25年、「地方財政平衡交付金制度」の創設

シャウプ勧告の趣旨に従って、奨励的補助金及び公共事業負担金を除く普通補助負担金についてその存廃を検討し、地方財政平衡交付金に組み入れることとなった。その結果、義務教育費国庫負担金、児童福祉費国庫負担金等110種類350億円が一挙に廃止され地方財政平衡交付金に振り替えられた。しかし、生活保護費負担金等31種類192億円は存置された。

 

 

 

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