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これらの諸課題に対処する基本的な考え方は、いかにしたら教育を受ける子供やその保護者達の立場に立った見直しができるかということである。そして、学校教育の行き過ぎた平等主義や画一性の問題は、むしろ、現在の教育行政の仕組みそのものに起因するところが大きい。従って、学校教育を支える教育行政制度については、より多様で柔軟な教育を実現するためにも、教育の地方分権が一層求められ、ひいては、学校現場における主体性の確保や意欲的な取り組みを生かしていくシステムヘ改革される必要がある。その意味では、義務教育の地方分権とは、市町村に行政責任を委ねるのが最も望ましいと考えられるし、また、そのことが前述の役割分担原則に沿うものと考えられる。

しかも、市町村が、その行政責任を果たすためには、単に市町村に職務権限を認めるだけではだめで、そのための財源をいかにして確保するかということが極めて重要な課題になる。

そこで、義務教育に係る教育財政の歴史を振り返ってみると、市町村負担の原則、市町村に対する国庫補助金制度の導入、国庫補助金額の増大とその限界、国と市町村との共同責任・共同負担という考え方の下での国庫負担金制度の導入、国と都道府県の共同負担という考え方の下での国庫負担金制度への移行、国庫負担金制度の否定と市町村負担原則の復活、再び国と都道府県が二分の一ずつ負担する国庫負担金制度の復活というように、その時代、時代に応じて基本理念そのものが大き<変化している。

そこで、義務教育を中心とした教育制度とそれを支えてきた教育財政の歴史をたどった上で、新しい地方分権時代の下における教育分権の在り方とそのための財源の確保方策、とりわけ、市町村税源の具体的な充実・確保の方策として、都道府県と市町村の間の税源の再配分について検討し、更に提言をすることとしたい。

 

3. 経費負担区分論と義務教育費の沿革

経費負担区分論は、明治維新後教育制度その他各種の制度の整備及び近代化が図られていく中で、国から地方公共団体又はその機関に委任される事務が急速に増大していき、そうした委任事務の増大が地方財政を著しく圧迫したことから生まれたのである。

 

 

 

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