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しかも、第2次勧告においては、国庫負担金とは、国と地方公共団体相互の利害に関係のある事務について国が義務的に支出すべき給付金をいうものとした上で、この意味の国庫負担金の考え方を今後とも基本とすることが適当である、としており、いわゆる義務教育費国庫負担金については見直しの対象にされてはいない。

つまり、現行法では、義務教育職員給与費については、都道府県の実支弁額の2分の1の額を一律に国庫が負担することとされているが、この考え方は、役割分担原則ないし行政責任明確化の観点から見直しをするべきであるという議論はなされていないのである。

しかしながら、現行の経費負担区分の考え方は、やはり前述の役割分担原則とは相容れないのではないかと考える。なぜならば、役割分担原則の下では、個々の事務の帰属主体は明確に決定されるべきであり、いったん帰属が決定された事務についてはその事務全体にわたって当該行政主体の包括的な権限が承認されるべきものである(一事務一主体原則)。従って、従来の機関委任事務のように、一つの事務に関してその本来の帰属主体(国)と現実の実施主体(地方公共団体)が分離する形態や、一つの事務につき二つの責任主体が同時的に存在するという形態は、行政責任を不明確化するという意味において役割分担原則とは相容れないものである。

ところで、義務教育に関する役割分担は、地方分権一括法による改正後においてもなお不明確である。というのは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条によれば、市町村教育委員会の職務権限は、一応、学校その他の教育機関の設置・管理、職員その他の人事、学齢児童・生徒の就学、学校の組織編制・教育課程・学習指導・生徒指導、教科書その他の教材の取り扱い等教育に関する一般的な事務を処理することとされている。しかしながら、一方で、義務教育職員については、同法第37条により、その任命権は都道府県教育委員会に属するとされており、また、その定数、給与、勤務時間その他の勤務条件等は都道府県の条例で定めることとされている。

義務教育は、確かに国家的見地からみて国も重大な利害をもつ行政分野であり、国民生活にとって最も基本的な行政であり、全地方公共団体を通じて一定の行政水準を保つ必要がある。しかしながら、我々が現在直面している「校内暴力」、「いじめ」、「個性を育み様々な可能性を引き出しうるような教育システム」、「学校完全週5日制と新教育課程の実施」等といった諸課題を前にして、戦後50年以上ほとんど基本的には変わっていないこれまでの中央集権型の教育行政システムではもうどうにも対処できそうにないことがようやく明らかになってきたのである。

 

 

 

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