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また、ここでもう一つはっきりさせておかなければならないのは、この「役割分担適合性規範」は、都道府県と市町村の関係を規律する基本的規範でもあり、実定法規範としても作用していくべきものとされていることである。この点も地方自治法において明らかにされている。すなわち、同法第2条第5項においては、「都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、1]広域にわたるもの、2]市町村に関する連絡調整に関するもの、3]その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるもの、を処理するものとされ、同条第3項においては、「市町村は、基礎的な地方公共団体として、1]〜3]の都道府県が処理するものとされているものを除いて、一般的に地域における事務を処理する」ものとされている。

このように眺めてくると、「役割分担適合性規範」という考え方は、国、都道府県、市町村の間の関係を、従来の「上下」・「主従」の関係から「対等」・「協力」の関係に置き換えるという意味には止まらなくなる。つまり、それは、単なる役割分担論ではなく、国や都道府県の役割を限定することを求めているのであり、いわゆる「補充性の原則」に基づいた「市町村優先の原則」に適合するかどうかを求める規範であることを意味しているのである。

 

2. 役割分担原則から見た義務教育費国庫負担制度の見直し

地方分権推進委員会の第2次勧告(平成9年7月8日)中「国と地方の財政関係の基本的な見直しの方向」においては、「地方分権の推進により、国と地方公共団体を上下・主従の関係から対等・協力の関係に移行させていくためには、地方公共団体の自主性・自立性を高める見地から、国と地方公共団体の役割分担の見直し、機関委任事務制度の廃止・地方への権限移譲・国の関与・必置規制の整理合理化等を進めるとともに、国と地方公共団体の財政関係についても基本的な見直しを行う必要がある」とあり、「国と地方公共団体の財政関係の見直しにあたっては、地方行政の自主的な運営の確保、行政責任の明確化等の観点から、地方公共団体の担う事務に要する経費については当該地方公共団体が全額を負担するという原則を堅持する」とされている。

このような考え方と照らし合わせて考えると、現行の地方財政法においては、いくつかの例外があり、地方公共団体の行う事務について、当該事務に対する国の利害の度合い等に応じて国が経費の全部又は一部を負担又は補助することとされている。

 

 

 

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