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4. おわりに

地方税のなかには、都市計画税のように課税するかいなかが、地方団体の選択に委ねられているものがある。その中には、宅地開発税という、実際に採用された実績のない幻の税も存在する。いずれにせよ、法自体がメニューを用意して、地方団体が選択できる制度にもメリットがあると思われる。さしあたり、事業所税は、現行法においては指定市に限られているが、人口30万で課税権の有無をきることが適当かどうか検討を要すると思われる。少な<とも、それ以下の市も、選択的課税権を認めるべきであると考える。

法定外税のなかで一定のものが類型化されてきたときに、個々の地方団体の自主性を尊重し続けるべきか、それとも税目を法定し、課税標準についても法定し、その税の採用についてのみ選択を認める方向にいくかは、今後の地方税政策の一つの課題となるように思われる。

最後に、法定外税に限られるわけではないが、地方税に関する事実を認定しようとするときに、同一の地方団体のなかであっても、地方税法以外の法律の根拠に基づき保有する資料を活用する必要性が高い場合がある。たとえば、ある県が「まあじゃん屋」や「ぱちんこ屋」に対して課税しようとする場合に、公安委員会の保有する資料を用いることができるのかが問題になる。さらに、ある県が旅館業法の適用を受ける旅館について一定の課税をしようとする場合に、同法に基づき「知事」が保有する資料を活用できるのであろうか。課税する「知事」と旅館業法による行政を行う「知事」とは別個の行政庁であるというべきであるから、資料の転用は許されないというのが一つの解釈である。課税自主権の活用の観点からは、この点についても再検討が必要である。地方税法に資料の「転用」に関する規定をおくことも考えられるが、果たして受け入れられる議論であろうか。問題を提起しておきたい。

 

 

 

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