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(1) 法律不遡及原則が憲法上の原則であることを理由に、専決処分を肯定する考え方がある(浦東久男「地方自治法の立法経緯における専決処分と地方税条例」税法学519号1頁(平成6年)。法律の改正に完全に拘束された選択の余地のない条例改正は、専決処分によることが可能であるが、選択的事項については許されないと考える(碓井光明『要説自治体財政・財務法[改訂版]』(学陽書房、平成11年)120頁)。

(2) 神奈川県の臨海地域における不動産取得税の軽減措置は、このような観点によるものである。なお、工場制限法等との関連も含め、事業所税の導入当初に議論された集積の利益論、事業所分散論などが、現在においても通用するのかどうかは検討を要する。事業所税の存続を図るにしても、課税団体を限定する政策までも存続すべきかどうかは検討を要するであろう。事業所の立地に対して、地方税制が中立とはいえないからである。

(3) 以下の記述は、碓井光明「法定外税をめぐる諸問題(上)(下)」自治研究77巻1号17頁、77巻2号3頁)と重複している点があるが、同論文の執筆と本研究会における報告とが同時並行的に進められたことによっている。

(4) 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」は、産業廃棄物の輸入及び輸出について規制し、そこでは、産業廃棄物の「流通」を予定している(15条の3以下)。しかし、それは、あくまで規制目的によるものであって、法にいう「物」には該当しないと考える。

(5) 神奈川県の臨時特例企業税条例(案)は、法人事業税の分割基準を臨時企業特例税にも用いることにしているが、法人事業税の分割基準であるからといって、当然に非課税規定との抵触問題がないと断定できるわけではない。

(6) 岐阜県多治見市は、一般廃棄物処理施設に埋め立てを目的として市外から持ち込まれる一般廃棄物に対して、その重量を課税標準として課する「一般廃棄物埋立税」を検討しているというが、その実質は、名古屋市が同市内に設置している一般廃棄物処理施設に持ち込む一般廃棄物に対する課税を念頭においているという。法制度上一般廃棄物の収集処理を市が行なっているために、そのような市に限定された課税になるのであるが、そのことのみで許容されないとはいえないと思われる。

 

 

 

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