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そこで、むしろ総務大臣の決定に至る手続を整備して、総務大臣が判断を拘束される行政委員会方式とするのが一つの方向である。現在の地方財政審議会が、どのような機能を果たしているのか、外部から知ることはできないが、その位置づけを参与機関に改めるとともに、審理(審議ではない)手続の整備を図る必要があろう。

 

3. 超過課税

(1) 超過課税の許容性

現在多くの法定の地方税について標準税率を定めるとともに、制限税率の定めがあるが、税目によっては、標準税率のみで制限税率の定めが置かれていないものがある。課税自主権を行使して、財源を確保する観点からすれば、歓迎されるべきことである。

現行の地方税法は、住民とくに個人住民のコントロールが機能する税に関しては、制限税率を置くことなく、住民の自主的選択に委ねるとともに、コントロールのきかないと予測される税に関しては、制限税率をおくという考え方に立っているようにみえる。すなわち個人の住民税に関しては、均等割・所得割ともに制限税率が置かれていないのに対して、法人の住民税に関しては、均等割・法人税割ともに制限税率を置いている点に示されている。

他の税を見た場合に、現在一定税率とされている税にも、弾力化する余地のあるものもありうると思われる。事業所税について、事業に係る事業所税の税率は、資産割にあっては1平方メートルにつき600円、従業者割にあっては100分の0.25とされ、また、新増設に係る事業所税の税率は1平方メートルにつき6,000円とされている(701条の42)。しかし、それぞれの市の状況が異なることを考えるならば、たとえ法人の税負担がほとんどであるとしても、標準税率と制限税率の組み合わせにするのが望ましいと思われる。

他方、不動産取得税に関しては、標準税率のみで制限税率がおかれていない(73条の15)。大幅な超過課税をしたうえ、個人の取得する不動産についてのみ軽減する不均一の課税も可能であるとするならば(結果的に法人による取得についての重課税)、不合理な事態も考えられるので、あらかじめ法によって制限税率を設定しておく必要があるようにも思われる。

(2) 超過課税の限度

では、制限税率がない場合に、地方団体が実施しようとする超過課税には、まったく限度がないのであろうか。この点は、にわかに結論を示すことができないが、生存権を脅かし、又は私有財産制度を否定するに等しいような税率を定めることは、憲法に違反するとされる虞があろう。たとえば、個人住民税の税率についても、このような限界があると思われる。

 

 

 

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