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問題は、地方団体間における費用負担の調整、あるいは、受益に応じた負担の調整システムが不十分なことにある。たとえば、河川の上流地域の地方団体が下流の受益地方団体に負担を求めようとする場合に、水源地域対策特別措置法12条による応益負担(あるいは、合意に基づいて設立されている水源地域対策の基金)を別として、上流の地方団体が下流の受益地方団体に経常的に負担を求める仕組みが用意されていない。上流の地方団体が下流の水道事業者としての地方団体に水源税を課税しようとすると、当該地方団体の区域外に所在する事務所・事業所における事業に対する課税であるとして、非課税規定に抵触するのであろうか。法定外税による問題の解決には限界のあることは否定できず、地方財政法の再検討とあわせた解決が必要とされよう。

(2) 法定外税と担税力課税論

租税論において、租税は担税力のあるところに課されるべきであるとされる。逆に「担税力なきところに課税することは違法である」ということが法原理として導かれるのかどうかが問題になる。必ずしも租税負担能力のあるとも思われない対象に法定外税を課税しようとする動きが強まっているなかで、この問題が顕在化するであろう。たとえば、産業廃棄物の排出行為に課税しようとすると、排出行為自体には負担能力を見出すことができないと言われるかもしれない。また、レジ袋に対する課税も同様であると言われるかもしれない。しかし、産業廃棄物を排出するような企業は、それだけの活動をしているので、負担能力を示すものであり、また、レジ袋の使用も、それだけ企業の力を示すものであるという見方が不可能なわけではない。使用済み核燃料に対する課税の場合も、それ自体は、マイナスの財産であるにもかかわらず、そのような核燃料を使用していること自体に負担能力があるので、その負担能力の延長上で説明できるのかもしれない。

いずれにせよ、こうした問題の背景には、地方自治法が掲げている収入の類型が限定列挙であって、それら以外の「公課」を地方団体が自主的に採用することができないという暗黙の前提があると思われる。いわば法定外税の形式が、実質的に他の「公課」の代替として借用されざるをえない状況にあるといえる。したがって、本来は、法定外税の枠内で議論するよりも、地方自治法レベルで(同法の解釈論も含めて)抜本的に解決すべき問題であるというべきである。

 

 

 

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