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まず、どのようなものが「国の経済施策」といえるのかが問題となる。たとえば、国が金融機関に公的資金を注入して、その経営の強化策を講じているときに、地方団体が金融機関に対する法定外の課税を行なうことができるであろうか。

次に、租税政策も「国の経済施策」といえるのであろうか。この点については、種々のレベルの問題点が浮かんでくる。

第一に、既に述べたことであるが、法定の税の規律をして課税標準や税率の規制を加えているという租税政策が「国の経済施策」といえるのであろうか。たとえば、都道府県が、金融機関に対して、事業税とは別に、一定の外形標準による課税を行なうことは、国の経済施策に反するのであろうか。この点に関しては、わざわざ「国の経済施策」に読み込むことは不自然であって、むしろストレートに地方税法の法定税に関する規律違反とみることで十分と思われる。

第二に、他の税目に関し、法が非課税としている法人に対して、地方団体が法定外を課税できるであろうか。たとえば、現行法において、日本道路公団、日本中央競馬会などは、事業税を非課税とされている(72条の4)。これらの法人の事業に法定外の税を課税できるであろうか。道府県が、独自に実質的な「事業税」を法定外税として課すことは、前述の理由で許されないと考えられる。しかし、事業税と目されない税を課すことは妨げられないというべきである。法人住民税を非課税とされている法人についても同じに考えることができる。

国が、日本中央競馬会を設立して、それを通じて中央競馬を主催させて、国庫納付金を確保し、一定の施策(畜産振興等)を推進しようとするときに、日本中央競馬会の経営を悪化させるような課税は、「国の経済施策」に照らして適当でないと主張されるかもしれない。しかし、日本中央競馬会にも固定資産税が課税されていること等に鑑みると、日本中央競馬会に対する課税が一切許されないという考え方が採用されているわけではない。

(2) 非課税規定との関係

法の定める法定外税の非課税規定は、道府県普通税・市町村普通税・目的税にほば共通の内容となっている。

1] 当該地方団体の区域外に所在する土地、家屋、物件及びこれらから生ずる収入

2] 当該地方団体の区域外に所在する事務所及び事業所において行われる事業並びにこれから生ずる収入

 

 

 

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