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しかし、それ以前に、関税の性質を有する税を地方団体が課税できるのかという問題がある。すなわち、日本国憲法は、国と地方団体との間の課税権の分配に関する規定をおいていないために、関税課税権が国に独占されることが明示されていないが、地方団体が、関税課税権の行使になるような税を課すことは、許されないというべきである。したがって、本来は、流通に「重大な障害を与える」ことの有無にかかわらず、許されないというべきである。

どの程度の場合に、「物の溢通に重大な障害を与える」ことになるのであろうか。流通課税や消費課税は、多かれ少なかれ流通に影響を与えるのであるから、「重大な障害」という程度問題を要件とすることは、課税しようとする地方団体と総務大臣との間に、見解の対立を生じやすい。そして、特定の地方団体が単独で課税すると、物の流通に障害を与える場合であっても、複数の地方団体、それも、理想的には全国の地方団体(全都道府県又は、全区市町村)が、連携して同種の課税を実施するならば、障害があるとはいえないことも起こりうる。たとえば、宅急便の利用について、特定の地方団体が課税するならば、「物の流通」に障害を与えることは疑いないが、全都道府県が足並みを揃えるならば、流通への障害を除去できることもありうるであろう。

法が「物の流通」としていることとの関係で、サービスは「物」に当たらないといってよいのであろうか。そもそも「サービスの流通」として、どのような場面を想定するかによるが、たとえば、電話機の利用に課税するならば、その課税標準が設置台数であれ、料金であれ、電話サービスに影響を与えるであろう。金融機関に対して特別の法定外税を課す場合には、金融機関の配置に歪みを生じさせて「金融サービスの流通」に障害を与えるであろう。「サービスの流通」という観念は、あまりしっくり感じられないが、「物の流通」に含めてよいと思われる。

さらに、「人の往来」に影響する課税も、人は「物」ではないという理由で、この消極要件の問題ではないのであろうか。「人の往来」は狭義の「物の流通」以上に障害を与えられてはならないと思われる。したがって、通勤者に対する特別の課税などは、問題とされよう。さらに、たとえば、有料道路の通行税や自動車の乗り入れ税などは、「人の往来」に対する影響と同時に、狭義の「物の流通」にも影響を与えるものである。

3] 「国の経済施策に照らして適当でないこと」

消極要件のなかでも最も問題の多いのが「国の経済施策」に係る消極要件である。

 

 

 

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