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課税事業年度なる観念を用いて、欠損金の繰越控除を適用した事業年度のみを課税の対象とし、かつ、事業年度末の資本金額又は出資金額が5億円未満の事業年度を除外することによって(結果的に一定規模以上の法人で、かつ繰越欠損金の限度内で課税が生ずる)、ただちに事業税と課税標準を異にするものであって何ら問題ないと断定するのは早計と思われる。事業税に関しては、法72条の19がわざわざ課税標準の特例を許容し、かつ、法72条の22第9項が、その場合の税率に関し、法定の課税標準に係る税率による場合における負担と「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」と規定しているのであるから、この規制を回避するための法定外税は許されないと見るべきである。これに対して、熱海市の別荘等所有税は、別荘等の延べ面積を課税標準とする税であって、固定資産税とは異なる税であるというべきであるから、固定資産税法定の趣旨を潜脱するものではない。

2] 「地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること」(2号要件)

ここにいう「物」とは、どのようなものを含むのであろうか。問題とされるのは、廃棄物のような、マイナスの価値のものを含むのかどうか、逆に、積極的財産価値のあるものに限られるのかという点である。もし、廃棄物の持ち込みに課税しようとすると(三重県が課税を検討したほか、岐阜県多治見市も検討している模様である)、「物の流通に重大な障害を与える」とされる虞があるからである。私は、このようなマイナスの価値のものは、法にいう「物」に当たらないとみるべきであると考える(4)。ただし、個別の法律がマイナスの価値のものであっても、その流通について障害をもたらしてはならない旨を定めているときに、法定外税の課税が、その流通を阻止する手段であると目される場合には、当該他の法律に抵触することによって違法とされる余地はあるといえよう。産業廃棄物に関しては、広域処理の考え方が採用されているようであるが、それは、広域処理を認めることを意味し、広域に「流通」することを妨げてはならないことを意味しているとは思われない。

「地方団体間における物の流通」は、直接には、アメリカ合衆国における州際通商のような、「地方団体間」の場面を意図していると思われるが、外国からの物の流通をどのように考えるべきであろうか。「物の流通に重大な障害を与える」ことが許されないことが求められる点においては、「地方団体間」を緩やかにみて「地方団体間における物の流通」に含めてもよいと思われる(実際は、もっぱら、外国からの物の流通にのみ障害を与える税というよりも、地方団体間の物の流通を妨げる税が同時に外国からの物の流通を妨げることになる税であろう)。

 

 

 

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