結局は、地方公共団体が提供する行政サービスに応じた適切な税目として何を選択するか、個々の税目の具体的な仕組みをどうするか、また、各税目をどのように組み合わせた地方税体系とするかを決定する際に、財政錯覚を極力小さくするという観点からの検討をきちんと加えるべきだと考えるべきである。
なお、地方行政サービスの中には、純粋公共財や準公共財が含まれるので、受益と負担の明確化というときに、外部性で捉えるべき受益をどう評価するかという問題がある。この点について、今回は十分な検討はできなかったが、引き続き研究を深めるべき課題である。
また、現在の地方財政では、補助金等への依存が高いことや、超過課税が法人に偏っていることによる楽観的財政錯覚に加えて、地方税制度に対する十分な知識・理解が広まっていないために、住民税や固定資産税負担が高く感じられるという悲観的財政錯覚も生じているのではないかとの指摘があった。
【参考:公共財】
・純粋公共財:非排除性(排除原則=対価を支払った人だけに限定してサービスを提供する=が適用不可能)と、消費における非競合性(ある人の消費が他の人の消費を減少させることがない)の両方を満たすサービス
(例) 防衛、外交、警察、消防、裁判、一般の道路、等
・地方公共財:純粋公共財のうち、便益の及ぶ範囲が特定の地域だけに限られているもの
(例) 街灯、交通信号、市町村道、治水施設、等
・準公共財:排除原則の適用に要する管理コスト(又は取引費用)が高くつくために、公共部門が適用せざるを得ないサービスや、消費者にとって取捨選択が可能で、排除原則が適用され得るが、外部性の存在等の理由で公共部門が提供しているサービス
(例) 有料道路、国立公園、教育、福祉、病院、等