この中でも特に、次章以下に述べる「コンパクトタウンの形成」については、検討報告書の中でも都心居住促進に向けた重要な課題の一つとして取り上げられており、21世紀の神戸のまちづくりの新たなテーマとして復興推進プログラムの最重点施策の一つにも位置付けている。
そこで、本稿では、特に「都心におけるコンパクトタウンづくり」という点に主眼を置き、本市における具体の取り組み事例の紹介も交えながら、都心居住のあり方について改めて検討したい。
III 都心におけるコンパクトタウンづくり
1 コンパクトタウンの定義
都心地域における多機能複合化は、さまざまな機能が無秩序に混在することを目指すものではなく、都心地域のなかに一定の広がり=歩ける範囲の自律した地区(まち)が形成され、これらが互いに連携することによって、都心全体としての魅力と活力が持続的に引き出されるべきである。
また、これらのまちは、機能純化あるいは一部の特化した機能を集中・肥大化させるのではなく、業務・商業・文化・福祉そして居住といった各種の都市機能をあわせ持ち、その保有する機能や空間を特色づけることによって、各々のアイデンティティが鮮明に表現されることが重要である。
そのためには、各々のまちの状況に応じて、企業・市民を含む多様なコミュニティが形成・稼動していることが条件になる。
こうした企業を含む市民が、自律的に自分たちのまちの個性化・魅力化に取り組み、自分たちのまちに愛着を持ち、住みやすく働きやすい環境を形成するまちのことを「コンパクトタウン」と呼び、また、これらの連携・補完によって都市全体の活性化を図っていこうという考え方を「コンパクトシティ」構想と呼んでいる。