<都市の暮らし>
豊かになった京の町衆は、お茶、お花、句会などを楽しむようになり、この生活文化を背景として生産された京都の産品は、全国各地で珍重され、京都に富を集積していくことになる。例えば、お茶、お花の席上で接遇する際に、背中を向けた客に失礼のないようにと大きな飾り結びを付けた幅広の帯が商品開発され、それがお茶、お花の文化と共に全国に普及し、大きな利益をあげてきたということがある。
このように、都心に住むということは、何らかの生業や職を持つことが前提であり、京町家は、居住と就労の二つの機能を有し、こうした町家が連なって、道路空間を共有する両側町が成立した。そこでのコミュニティが祭りなどの生活文化を支え、高密度の都心居住が保たれ、伝統的な町並み空間を形成してきたのである。
(財)京都市景観・まちづくりセンター作成資料による
(3) 都心部の現状と課題
こうした「定住」と「産業」と「空間」の良好な循環が現在停滞しているところに都心再生の課題がある。
<定住>
他の大都市中心部と比較すると高い人口密度だが、京都市においても都心部の人口は流出し、昭和35年と比較すると都心4区の定住人口が40%以上減少するなど人口の空洞化が著しくなっている。ただし、近年、地価の下落、地下鉄東西線の整備などにより、都心部でのマンション供給が大幅に増加し、上京区、中京区及び下京区においては、平成12年の国勢調査で人口が増加に転じた。
しかし、新たに建設されたマンションは学生や単身者向けのものが多いことから、都心部への流入人口の多くは若年層であると思われる。従って、移転の可能性が高く、地域への帰属意識は、従来、京町家に居住し、地域コミュニティを支えてきた層と同じようにとらえることはできない。そのため、地域のまちづくりの担い手になり得る定住世帯を確保することが課題である。