日本財団 図書館


以上のように、3地区のうちでは、新出来地区がほぼ収束の段階にきている。しかしそれは道路等の基盤整備が完了するということであって、地区内の建物更新はこれからである。他の2地区においては事業の真っ最中と言うこともあって、道路予定地にかかる建物の除却が進みつつあるため、建物の密度が低くなっている。そのため、学区別人口の推移(筒井学区、葵学区)でも分かるように、地区周辺の人口はいまだに減少傾向にある。

いずれの地区においても、土地区画整理事業地区内で密集住宅市街地整備促進事業を同時施行することによって、建物の除却が促進されるという事業実施上のメリットは生かされているが、その後の建替えにあたっての建物の共同化や協調建替えといった市街地環境に配慮した建築誘導策は十分にとられているとはいえない。

今後は、公共交通機関が充実しているという立地条件の良さと出来上がりつつある都市基盤を有効に活用して、高密度でしかも落ち着いた環境の都心居住をいかに実現するかが課題である。

 

(2) 誘導手法による都心居住の促進

名古屋市では、都市計画制度や補助制度によって、民間による再開発事業やマンション建設を誘導して、住宅供給の促進をはかっている。

ここでは、中高層階住居専用地区の指定、拠点開発にともなう住宅の供給、都心共同住宅供給事業の3つの誘導手法の現状について説明する。

 

○中高層階住居専用地区の指定

中高層階住居専用地区は、都市計画法で定める特別用途地区のひとつである。

特別用途地区は、用途地域内において特別の目的からする土地利用の増進、環境の保護等をはかるため定める地区であり、平成4年の都市計画法の改正により制度化された。中高層階住居専用地域は、建築物の中高層階における住宅の確保及び住居の環境の保護をはかることを目的とし、都心部、都心周辺部等において定住人口の確保をはかる地区において指定するものである。

名古屋市では、平成8年5月の新用途地域の決定にあわせて、都心域内の東区と中区の一部(約116ha)の商業地域において、4地区を指定した(図7)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION