日本財団 図書館


2 都心居住政策の事例

居住地として都心を選択する要因、あるいは従前からの居住者が都心居住を続けたいと考える理由はさまざまである。例えば、通勤の利便性、充実した生活サービス施設や文化施設の存在、人が多く集まる賑やかさ、都心ならではの華やかさなどが考えられる。一方、都心居住を阻害する要因も多々ある。郊外に比べるといまだに高価な住宅価格、密集した市街地における日照、騒音などの住環境問題などである。

本来、定住促進策とか都心居住政策というものは、雇用促進、産業振興、都市魅力向上、あるいは都市のイメージ戦略など幅広い分野にわたる総合的なものでなければならないが、本稿では、住宅施策、市街地整備施策といった行政施策として直接実施することによって都心居住を促進する政策の分野に絞り、大きく2つに分類して本市の事例を紹介する。

ひとつは、土地区画整理事業、住環境整備事業など、市が直接事業を行なっている面的整備事業、もうひとつが都市計画制度や補助制度によって、民間の再開発事業やマンション建設を誘導して住宅供給を促進する誘導施策である。以下、簡単にその実施状況について述べる。

 

(1) 面的な居住環境整備(都心域における地区総合整備の実施状況)

○地区総合整備とは

名古屋市では、戦前から耕地整理事業と土地区画整理事業が盛んに行われ、現在の市街化区域のほぼ7割の区域がこの2つの事業によって整備されてきたといえる。都心域とその周辺地域においては、戦災で焼き尽くされた市街地の復旧・復興をはかるための復興土地区画整理事業により、道路、公園などの都市基盤を整備し、東部の丘陵地をはじめとする新市街域については、組合施行の土地区画整理事業により都市基盤を整備するとともに、宅地の供給をはかってきた。

しかし、都心部周辺の既成市街域には、復興土地区画整理事業の区域に含まれなかった地域など都市基盤が未整備で老朽木造住宅が密集し、居住環境や防災面から課題を抱えている地域が一部に存在し、また、産業構造の変化にともなう工場の転出などにより現れる大規模な低・未利用地の土地利用転換や有効活用をいかにすすめるかが課題となっている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION