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実際、慢性的な住宅不足と大規模な従業者の流入が、工場の周辺部における過密な住宅地の形成を促したと考えられる。こうした状況からは、当時、非常に職住近接型の市街地が形成されていたものと考えられる。戦中に大きな被害を受けるが、高度経済成長の中で復興土地区画整理事業が行われ、今日の区画が形成されるに至った。

一方で、戦後区画整理が行われなかった地域では、木造を中心とした密集住宅市街地が形成され、劣悪な住環境が形成され、迅速な対応が求められていたほか、戦後の高度経済成長期に形成された集合住宅も時間の経過とともに、老朽化が顕著となってきており、建替が必要となってきた。さらに、経済構造の変化とともに、臨海部の京浜協業地帯における雇用創出が弱まってきており、多くの低未利用地の出現が見込まれており、迅速な対応が求めれられている。こうしたことから、本市では、既成市街地において「更新型」や「修復型」のまちづくりを行っていくとともに、大規模工場の跡地の有効活用も大きな課題として挙げられる。

さらに、本市の住民の多くが東京・横浜での雇用に依存している構造にある一方で、大企業の多くが工場を移転させ、移転後に研究所機能を持たせている状況にあり、研究開発型の産業構造に移行しつつあるといえる。こうした地域資源を活かした産業の活性化や雇用の創出を視野に入れた経済振興策も都市の再生という観点からは重要な課題の一つとして位置づけられる。

 

2 都心の位置づけ

本市の総合計画である「川崎新時代2010プラン」では、本市の細長い市域と東京と横浜の間に位置するという特性を踏まえ、市域全体のバランスある発展と、各拠点の特性を活かし、相互に連携しあう、多角的な都市構造の構築をめざしている。このため、都心・新都心・第3都心を高次な都市機能の集積を有する拠点として位置づけるとともに、生活中心拠点としての副都心の整備や地区生活拠点の整備を促進し、生き生きとした市民生活を支える魅力的な都市空間の形成を進めることをうたっている(図4参照)。

 

図4 都市拠点整備計画図

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