2] インフラ投資・運営の効率からの視点
郊外都心部投資費用比較論、既存生活施設活用論、混雑回避論
3] 大都市における通勤時間の過大さに関する視点
家庭・地域内のコミュニケーションの保証論、情報拠点職住接近論
4] 都心既存住民の生活継続保護の視点
生活継続保護論、コミュニティ保全論、近居隣居論
こうした視点を踏まえた場合には、臨海部における工業化に伴う成長と拡大につれて、「都心」と「郊外」が機能的・空間的に分離してきた本市では、臨海部への労働力を提供してきた密集住宅地域における住環境の確保などの問題解決の必要性が叫ばれており、都心居住に関する課題は、インナーシティ問題の解決と大きな関係性を有するといえる。さらに、工場移転後の跡地等の大規模な土地利用が見込まれる地区で、総合的な再開発を進めていくことも重要であると考えられる。
こうした状況を踏まえれば、本市では都心居住を広義に捉え、現状では明確に都心居住政策の推進をうたってはいないものの、今後積極的に推進していくことが期待される。
II 市街化の進展と都心の位置づけ
1 川崎の市街地の形成過程
川崎市の都市化は、大規模工場の立地とそれに伴う人口の増加に対応した住宅の整備という形で産業の発達と大きな関係性を有しながら、進められてきた。特に臨海部の埋め立て地における大工場の進出を背景として成立し、財政的に豊かであった川崎市が住宅地に悩む一方で、社会資本を十分に持たない周辺市町村と合併していくというのが市域拡大の大きな要因であり、労働者に対する住宅戸数の確保が当時の緊急の課題であったといえる(図3参照)。