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こうした一方で、基本計画の中では、「都心居住」を意識した居住促進地域の明確な定義はなされていず、本市の住宅基本計画の中で、都心居住という言葉が見られるにとどまっている。しかしながら、本市の地理的特性から、就業就学や買い物の場を東京などに依存する構造にあることから、こうした傾向に歯止めをかけ、都心の定住人口を増加させていくとともに、産業の活性化を図り、職と住を近接させていくことが今後の重要な政策課題となっていくと考えられる。

都心の定住人口の増加という視点に立ち、本稿では、川崎の都心地域おける居住空間の創出に関する各種施策について、JR川崎駅西口で行われている市街地整備促進事業のケースを紹介しながら、都心居住の課題について、検討を行うこととする。特に、同事業が既存公団住宅等の建替により高度利用を促進することで、定住人口の増加を図る既成市街地の修復型のまちづくりともいえることから、都市の再生という視点に立って検討を行っている。なお、検討に当たっては、本市の総合計画では、都心地区をJR川崎駅周辺地区と新川崎・鹿島田地区を含む広範囲に設定しているが、本稿では、中心市街地活性化の基本計画で都心と位置づけられていること、既存の商業・業務機能などが集積し、高度で一体的な開発が進められていることなどから、JR川崎駅周辺地区を都心として位置づけ、都心居住に関する検討を行っている。

また、ここでの意見は私見であり、川崎市のものでないことをあらかじめお断りしておく。

 

I 本市における都心居住の必要性

都心居住の議論の始まりは、バブル経済がもたらした都心部やその周辺部におけるオフィス機能による住機能の駆逐であったと考えられる。本市の場合には、東京を中心として首都圏を同心円として考えた場合、その周辺に位置していることから、逆に人口の流入があり、バブル期でも人口の減少は見受けられなかった。図2は、中心市街地活性化法に基づく基本計画の認定を受けた対象地域における人口の推移を示したものである。年々人口は増加傾向にあり、人が生活する「まち」としての特徴を有していることが伺われる。こうしたことから、バブル経済がもたらした都心居住の必要性の議論は本市の場合には当てはまらないといえる。

 

図2 川崎駅周辺の人口の推移

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