(3) まとめ
本調査で得られた知見を以下に整理する。
1] 都心居住者は、日用品の購買では郊外居住者より大規模店舗への依存度が低く、都心コアヘの依存度が高い。買回品では大規模店舗への依存度が高いが、それは都心コア内である傾向が強い。従って都心居住の推進により、都心コアの商業及び既存商店街の活性化が期待できる。
2] 購買行動では大規模店舗、一般店舗とも都心居住者の移動距離が郊外居住者より短く、特に都心コアヘの依存度の高い品目でその差は顕著である。また都心居住者の最寄品の購買では、一般店舗への移動距離が大規模店舗よりも短く、一般店舗の存在が都心居住の利便性を高めることの一助となっている。その他の施設利用行動も、ほとんどの場合都心居住者の方が移動距離が短い。従って都心居住の推進により、生活行動に際しての移動距離が短い利便性の高い都市生活の場の確保が期待される。
3] 利用交通手段の割合は、各行動とも都心居住者の「自家用車」が低く、「徒歩・自転車」及び「地下鉄・JR」が高い。行動頻度が他より高いと想定される最寄品(食料品)の購買は、「徒歩・自転車」と自家用車」の両圏域間の差が大きい。また買回品(高級衣料、大規模店舗での書籍)の購買では「地下鉄・JR」の割合が3km以内圏の方が大幅に高く、徒歩等で行くには遠い店舗へは、都心居住者の場合、大量系公共交通機関を利用する傾向が強い。都心居住の推進は、前述の移動距離が短いこととあわせ、エネルギー効率の良い都市構造の形成や公共交通の経営効率向上に向けても効果があると言える。
4] 移動距離と利用交通手段の両圏域間の差は、その他の施設のうち主として民間により提供されるものの値が、主として公共により提供される施設の値に比べて大きく、都心居住の推進により、利便性高く民間サービスを享受できる場が形成される可能性のあることを示している。
5] 3km以内圏の1970年人口は約33万人で、1995年の約1.4倍であり、中高層共同住宅化への転換という住宅形態の差異も考慮すれば、この圏域には大きな人口収容力が残されている。また今後も全市的には人口の増加傾向が続く(札幌市基本構想では2020年で205〜210万人と想定)ことから、増加人口が主として都心部において収容されるとすれば、総体として既存商業の活性化やエネルギーの効率化に資する方向へ都市構造が向かうと言えよう。
このように、札幌における都心居住者の行動特性の分析を通し、都心居住の有効性が実証されている。