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以上のように、都心居住論は多様な展開を見せているが、大別して都心居住自体の利点から主張されるものと、都市の全体構造の目標像に関連づけて主張されるものとがある。軽重はあるものの、一つの都市で主張される都心居住の必要性は、いずれか一つの論理によるものではなく、複合的な課題として捉えられるであろう。札幌も同様である。

 

3. 札幌の都心居住者の行動特性から見た都心居住の有効性(5)

 

ここでは、札幌の都心居住者の生活行動実態に着目し、郊外居住者のそれと比較検討することにより、都心居住の有効性が生活行動の面からどのように主張できるかを探る。

都心居住の有効性を主張する論拠のうち、住民の生活行動に関わるものとしては、次の諸点への期待が考えられる。まず都心居住人口の増加により、1]「都心商業や既存商店街の活性化が図られる。」このこととあいまって多様な都市サービスが高密度に提供されることとなるため、より狭い領域内に生活行動の相当部分が収まるようになり、2]「利便性の高い都市生活の場が確保される。」とともに、3]「エネルギー効率の良い都市が形成される。」また4]「公共交通機関の利用者が増加することで、その経営効率が高まる。」

そこで、これら1]〜4]の観点に立って、住民の購買行動及び各種施設の利用行動の特性について実態把握を行った。

 

(1) 方法

ア. 調査の方法

調査は、平成8年に行った「次期長期総合計画の策定に関する市民意識調査」中に生活行動に関する設問を設けることによった。当該調査は、住民基本台帳より20歳から79歳までの男女10,000人を無作為抽出し、訪問留置法及び補完的に郵送法により行った。

 

 

 

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