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2. どのようにすれば、都心居住を促進できるのか

 

(1) 都心居住施策の分類

都心居住を促進するために行政がとり得る施策は様々であるが、これらの施策を公共の役割別に分類した場合、概ね以下のように分けられると考えられる。

1] 公共による住宅供給

2] 民間による住宅供給のための規制・誘導

3] 居住者への支援

4] 公共による居住環境等の整備

1においてみたとおり、都心居住の促進を包括的に肯定する論拠は必ずしも明確ではないが、個別具体的な政策課題が正当化される場合には、必要に応じこれらの施策を活用していくこととなろう。

 

(2) 公共による住宅供給

公的資金による住宅供給には、地方公共団体が直接公営住宅を建設・運営する手法や、地方住宅供給公社を活用し住宅を建設・運営する手法がある。

所得水準が向上し、また高度成長期のような旺盛な住宅需要がみられなくなった今日においては、単に勤労者等に対し住居を提供するため公共が住宅を整備する必要性は以前より薄れてきているといえる。従って、民間住宅の建設の呼び水的な都心住宅の建設が考えられるが、B/Cを十分に検討して行うべきであろう。

国の住宅宅地審議会の答申(平成12年6月)においては、次のように述べている。

 

(成熟社会における住宅宅地政策の課題)=「市場重視」「ストック重視」

成熟社会においては、生活の質の向上や経済社会活動の基礎となる「人」の育成が重要であり、その人の生活空間である住宅宅地を豊かにすることが豊かな成熟社会を実現する上で不可欠である。そのために以下の二点に留意したい。

市場は万能ではないが、人々のニーズを最も良く映し出す鏡である。住宅宅地についても市場がうまく機能するように環境を整えるとともに、その誘導を行い、また、時として市場ではなしえない役割を公的部門が補完する。こうして、市場と調和した「市場重視」(注)の政策展開を行うことによって、効率的に豊かな生活空間を創造できるチャンスが広がるのである。

成長の右肩上がりが終わった今、求められるのは「良いものを長く、効率的に利用する」という発想である。豊かな成熟社会を支えるカギは、個々人の価値観に基づいた居住を実現しうる社会全体のストックの「質」とその「流動性」を高めることである。このため、「ストック重視」(注)の政策展開を行うことで、さまざまな制約の下においても、国民の多様なニーズに応じた居住の選択が可能となるシステムを構築すべきである。

 

 

 

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