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仮に、都心の人口が、市場原理により人口レベルとしては適正な均衡点に向かって調整されつつあるものの、あまりに急激な変化が社会に悪影響を与えているというのであれば(上記Aの論点)、変化のスピードを緩和すること(「激変緩和措置」)が正当化されうるのであり、現状の都心の人口レベルを永久に維持することが正当化されるものではないことに留意する必要がある。

以下では、再度、これまで提示されてきた多くの都心居住施策の論拠を、この二つの視点に基づいて分類し、それぞれについて、その正当性、論理性についてコメントすることとしたい。

 

A. 現在の都心の人口減少のスピートが速すぎることが問題てあるとする視点

(「調整費用」の問題)

【上記のとおり、このタイプの論拠は、「激変緩和措置」としての都心居住施策を正当化するのみであり、恒久的な都心居住施策の論拠とはならないことに注意が必要。】

 

1] コミュニティの崩壊

人口流出によって、既存のコミュニティ(町会やお祭り、近所づきあい等)が継続できなくなるという論点。人口流出によるミクロの悪影響が目に見える形で認識される点でわかりやすく、様々な立場の論者によりよく主張される論点である。バブル期の地上げの問題点として主張された際には、さらに強い形で、既得生活権の擁護という形で主張されることもあった。また、転出性向が比較的低い高齢者が転出せずに残る傾向があることから、コミュニティの高齢化が強調される場合もある。

 

 

 

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