日本財団 図書館


重要なことは、マネジメント・コンサルタントは、通常、(いわば)顧客に対してみずから私的に対応する。一方、他の二つのグループは、自分達の結論をより広い聴衆に提供する慣習がある。学会は、三つのグループの中で、疑問の余地なく、もっとも楽観主義ではなく、なにが失われるか、何が得られるかを心配し、長期的影響の原因を表明する(Derlien, 1998; Dunleavy, and Hood, 1994; Ingraham, 1997; Radin, 1998)。

 

各グループ内にも差違はある。国家機構の差違は、想定されるグループが一つの声で語ると最も思われるので、おそらく最も興味深い。一つの明らかな区分は、立法府と行政府である。もう一つは、行政府と独立した監査機関である(ポリットら(Pollitt, et al, 1999年)は、監査機関のマネジメント改革に対する反応について広範に取り扱っている)。第三の区分は、行政府内における大蔵省と事業執行省庁である。簡単に2例をあげて、この認識の差違を示す。1996年にカナダ大蔵委員会の会長は、「政府をただす:結果測定とアカウンタビリティーの改善」と題する年次報告を立法府に対して作成した(Treasury Board of Canada, 1996)。大臣は以下のように主張している。「我々は、この分野ではすでに明白な結果を達成した。たとえば、財務マネジメントシステムの近代化、議会に対する報告の改善、情報技術の使用法の改善、それに政府サービスの供給の代替的方法の採用である(緒言)」。しかしながら、会計監査院は、これらの資料を再検討したとき、以下のような多くの強い批判を行った。

 

会長の報告は効果測定の際の適当な西郊図式を示してない[…]会長の報告は評価と再検討の他の形態を区別していない[…]委員長の報告は、大きな変化を経験し、かつ多くの重要課題を処理するという活動の進展について、あまりにも楽観的な図式を示している[…]大蔵委員会は、この議会に対する報告に再検討の実績を確実に示し、また評価の明確な方法を盛り込むことを保証すべきである(『カナダ監査に委員長(1997年)』、小節3.80、3.83、3.86)。

 

同じ頃、議会の小委員会も同文書を検討していた。同小委員会は、その報告書のなかで、次のような批判的な意見を表明している。

 

これらの文書に認められる欠点のひとつは、議員たちによって表明されているように、報告に客観性が欠けていることである。多くの回答者は、―省庁の本当の実績について何も述べていない「当り障りの良い」文書に読み取れる結果として―、省庁がみずからの実績を報告することが不適当であったと示唆している(Duhamel, 1996, p.14)。

 

この循環論法を完結するために、議会自体が、―カナダ議会を含め―、「実績データを提供されても、そのデータを利用する際に模範的ではなかったことを付言しておく。おそらく、例外的で極端な統計数字を強調することによって、2〜3の重要項目に強烈な印象を与えたいという誘惑に負ける傾向があったかもしれないが、統計数字に示されている広範な構図を研究し理解することはなかったのだろう。

 

行政府内の認識についての内部の差違に関しては、欧州委員会が、様々な部局間の緊張について、多くの例を提供している(たとえば、Middlemas, 1995, pp.247-55を参照のこと)。たとえば、「SEM 2000」と「MAP 2000イニシアチブ」は、主として委員会の「水平」部分―DGIX(人事)、DGXIX(予算)、DGXX(内部統括)、および事務局長―から生じたとみられる。このように、改革の諸側面は、疑念と関連していたし、また、誰か他の人の課題に属しており、潜在的にどうにもならないものとして認識されるために、「業務(垂直)」長官によって改革の速度が減速された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION