日本財団 図書館


システムの改善は些事ではないし、警察に対して実績指標の導入といった特定の個々の改革でもない。むしろ、政府の構造や特徴の全体に影響を与えることを意図する大規模なものである。クリントン/ゴアのNPRは明らかにこのタイプのものであるし、フィンランド政府の1998年の決議「高品質のサービス、優れたガバナンス、責任ある市民社会(1998a年、1998b年)」もまたそうである。したがって、こうした改善は、事実上、いくつもの異なる側面や要素を持たざるを得ない。それらは、ここでは、便宜上、二つに分けられる。すなわち、構造的改善と文化的変化である。

 

5.5.2 システムにおける構造的変化

 

大規模な組織再編成は、政治行政システムの構造と、それゆえそのシステム内のまたは境界を越える相互作用のパターンを改変する。1988年から1998年の間のイギリスでは、非産業公務員の70%以上のものが、気づくと、新しいタイプの組織―「ネクスト・ステップ」の執行機関―で働いていた。また、イギリスでは、保守党の大臣らは、より大きな自治権と競争という手段を、健康管理部門や教育部門に導入した構造改革は、病院と学校を再活性化し、効率的にし、利用者に対して敏感になるという影響があったと主張した。ニュージーランドでは、1984年からの10年の間に、ほとんどあらゆる公共部門組織が実質的な組織再編を体験した。フィンランドでは、1990年代初頭から半ばに欠けて、中央省庁の全体が簡素化され、改造され、中央省庁と地方自治体との間の規制の層を軽くした。これらは、多くの大規模な再編成の努力の数例にすぎない。

 

政治家や上級公務員は、こうした改革が政府のシステムを大幅に改善したと主張するのは異例なことではないし、実際、それがかれらの目的の一つであった。しかしながら、これらの主張を評価することは難しい。まず、組織構造は中間変数であって、構造改革が出力もしくは最終結果の移行にどのように導くかを正確に示す、試みられ検証され広く受容されたモデルはない。この不確実さのささやかな一例を挙げるなら、フランスの調査が、民営化がある組織による実績改善に導くかどうかという問いを提示したとき、結果は、表5.14に見るとおり、決定的ではなかった。

 

さらに、改革後の構造自体、安定からはしばしばほど遠いと見る人もいるかもしれない。ニュージーランドやイギリスなどの国々は、1980年以来、いくつかの部門に、構造改革の波を2〜3回強いたし、この過程が続くであろう証拠はいたるところにある。フランスでは、中央官庁の改造はしばしば行われるが、この過程がシステムの性質を根本から変えると信じる者はほとんどない(Rouban, 1997)。もっと長期にわたって観察は、様々なタイプの構造の流行の変遷を示している―大型官庁、小型の官庁、地域レベルの組織、地元レベルの組織など―。これらのすべてが、構造改革を経てシステム改善を担保する過程は、とくに安定しているものなのか、もしくは確実なものなのかに関する疑念を浮上させる。詳細な研究は、影響の複雑なパターンを示す傾向があるし、その中のいくつかは、改善として計算できるものもあるし(つねに、見る人の価値によるが)、大勢がおそらく問題ありと考えだろうものもある(たとえば、Boston et al, 1996; Halligan and Power, 1992: Pollitt, Birchall and Putman, 1998)。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION