しかしながら、顧客志向を達成するのは容易ではない。オーストラリア公共サービス(APS)を対象に行われた改革の事例を考えてみよう。1992年オーストラリア市民調査では、所与の機関とあらかじめ契約を結んだ人々の73%がその機関のサービスは同水準にとどまっていると考えており、26%がサービスは変わった(内約3/4は良い方に変わった)と考えていた。同時に、オーストラリアの上級公務員(SES)のメンバーは、改革が顧客への関心を高まったと考えているかどうか尋ねられ、77%が「高まったと思う」と答えた。下級職員で「高まったと思う」と答えたのはわずか51%である。このこと―それに、同じリポート内の他の証拠―は、顧客重視と品質改善の展望が、回答者が位置する場所にある程度左右されるという複雑な構図を示している。上級職員は下級職員に比べると、より楽観的であるかのように見えるが、市民の少数派が違いに多く気づいているに過ぎない。我々は、本書の他の部分で、関連する変数が極めて複雑であることを示唆した(Pollitt, Bouckaert, 1995)。
多くのことが関連する党派の諸期待に依存しており、サービスの「生産者の質」が変わると同じくらい期待も大きく変わるので、満足の水準もまた大きく変動するかもしれない。実際、シニカルな政府にとって、満足度の評点をあげるための一つの戦略は、公衆の期待を下る試みであるかもしれない(いくつかの確かな事例―たとえば、国民年金―では、該当する政府もいくつかある)。それゆえ、公共サービスにおいて認知されている質を測定することは、決して技術的な問題ではない。これには政治的・心理的要素があり、これらが「満足度」を―達成されたとたんに、あるいは達成される以前であっても新しい位置に飛び移っているかもしれない―可動的な目標にさせている。
5.4.3 増大する実績志向
過程の改善としての結果の概念内にある第二の一般的なテーマは、‘実績’を重要視する過程をますます強調するのは良いことだということである。実績志向は、しばしば入力や手続の正確さ(規則遵守)に関する「伝統的」焦点と比較される。それはそれ自体では良い。
本書が取り上げた10ヶ国において、どの国も、異なる時期に、異なる部門で、(推定するところ)新たに「実績」を重要視することを称揚したが、それはしばしば「結果を得る」ということと事実上同義のものとしてみられている。1990年代半ばには、欧州委員会でさえ、精巧に造られたこれまでの支出に対するコントロールから幾分離れて、結果の監視に大して権限を大きく集中していく意図を表明した。アメリカ合衆国の会計検査院は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドおよびイギリスの比較研究に着手し、戦略計画、業務計画、測定、実績説明、資源の有効活用、現場管理のためのインセンティブの存在が、すべて実績志向のマネジメントを成功させる上で重要であるという結論に達した(General Accounting Office, 1995)。
こうした見解の背後には、実績に基づく予算が伝統的な勘定項目を持つ漸増主義的な予算編成よりも良い結果をもたらすという仮定が横たわっている。さらに、予算編成の仮定と実績測定を統合するのは「良いこと」であるということが広く仮定されている。この包括的アプローチの問題は、この種の統合を行う試みがしばしば根付かずに終わる理由を説明することにある。