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この種の過程の改善が持つ主たる問題は、最終結果との結びつきが確実とはいえないことである。行政文化が改革の精神に敵対しているままであれば、新しい過程はミニマリスト的かお決まり形式主義の方法で観察されるだろうし、現実の変化もともなわないだろう。たとえば、ルーバンは、ドイツやフランスの公務員は、しばしば、みずからが社会的価値および/もしくは個人的地位を脅かされそうにみえる場合、その職業文化の変化に抵抗することもあると示唆している(Rouban, 1995, p.28-9)。

 

過程の変化のリスト―上記で引用したNPRのリストなど―を解釈するうえでさらに困難なのは、リストが選定の偏向という重大な性格を持つものであるかもしれないということである。つまり、公共部門の中の最高実績をあげている部分から好事例が選ばれ、悪い面の影響、他の公共部門の部門(以前より悪化している可能性もある)はともに無視される。

 

興味深いのは、新しいマネジメント業務は、すでにマネジメントが良好だという評判の部局や出先機関…もしくは膨大な量の請求や書式を処理する機械的な組織、すなわち政府のボイラー室のような部分において、以前にもまして成功裏に実現されることが多いことだ。多くの目標や活動を持ち、みずからの業務方針が中等-高等な内容の部局では、努力はそれほどは実っていない。それゆえ、改革はよく機能している部局を整理する役には立ったが、より注意を必要とする部局には限られた影響しか与えてこなかった(Peters and Savoic, p.423)。

 

以下の二項では、過程の改善のうち、もっとも一般的でよく見かけるタイプの分析を行う。

 

5.4.2 増大する顧客志向

 

ここでの仮定条件は、公共サービス組織が、顧客にもっと関心を払えば、より良い結果を提供することを学ぶはずだということ、顧客が満足の増大という変化と経験に気づくはずだということである。

 

多くの行政管轄体や多くの国々において、顧客や得意先、利用者、患者、乗客(他のなんであれ)を第一に置くという考えに対して、多大な修辞的な強調がなされてきた。アメリカ合衆国のNPRやイギリスの「市民憲章」、フランスの1994年のプログラム「公共サービスへの市民受け入れ年(Annee d l'accueil dans les services publique)」、本書を執筆中にフィンランドで導入された「サービス憲章」をはじめ、他にもたくさんある―どのプログラムも顧客志向増大する主張している。さらに、TQMなどの現代的品質改善技術は、顧客の要求を中心にすることに立脚しており、オーストラリア、カナダ、オランダ、フィンランド、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリスおよびアメリカ合衆国の公共部門に導入されるとともに、欧州委員会の同様な部門によっても促進されている。1987年、OECDは、当時流行中でその後ますます流行するようになった修辞に飛びつき、洞察力のある質問を投げかけた。「公共サービスがすでに公衆の役に立つために存在しているのなら、なぜ、あれほど多くのOECD加盟国が、これからそれを実現するというキャンペーンに着手しているのだろうか」(OECD, 1987, p.9)。

 

 

 

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