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しかしながら、実際問題としては、プログラムの介入に確かに関係しているこうした結果測定の利用は、むしろ規則というよりも例外である。マネジメントの改革の様々なプログラムのレベルでは、実行された活動と、積極的かつ安全に関連づけられた一揃いの最終的な結果を結びつける説得力のある統一された研究は、本書で取り上げた10ヶ国のなかでは、皆無である。この手の合理性は、時に、ある特定の、よく知られている文脈においける非常に特別なプログラムを対象とする場合には可能かもしれないが(たとえば、輸送管理測定の評価―(Bureau of Transport and Communications Economics, 1995を参照のこと)、上述したような様々な改革戦略を対象とする場合には、たとえそういうことがあるにせよ、不可能である。近年の、「効果的な政府の理論」を開発しようという学術的な試みは、広範にわたる情報を必要とすることを示している―データが豊富で、電子工学的に円滑ではあっても、それはふつう利用可能なレベルをはるかに超える―(Rainey and Steinbauer, 1999, 特にp.3を参照のこと)。

 

それでも、やはり合理性によって防衛可能な「結果」についての概念探求が続いている―実際は、ますます激しくなったように見える。近年、数ヶ国で多大な努力が投資された技術が、「水準点設定」の技術である(Department of Finance, 1996; Dahlberg and Isaksson, 1997,:National performance Review; 1997b; Next Steps Team, 1998)。これにはいくつか種類(内部水準点、機能的水準点、競争的水準点、一般水準点など)がある。これらの大半は、一つの組織の実績を、同じ過程や活動を行っている他組織の実績と比較することにより、なんらかの過程や活動に優れた組織を探し、しかる後にいかにして優れた実績が達成されたのかを分析して教訓を得ようとするという、基本的に単純な考えに支えられている(Pollitt, Cave and Joss, 1994)。しかしながら、この技術は一般化された全体構成となるよう開発されているので、その主張するところでは、実質的に官民を問わないばかりか、その他の組織も含めていかなる組織にも使用可能である。ヨーロッパでは、これは結果的にヨーロッパ品質管理財団(European Foundation for Quality management)の「優良事業」モデルにとなった(European Foundation for Quality management, 1996)。イギリスの「ネクスト・ステップ」の出先機関のなかには、EFQMモデルを用いて、組織相互の実績の比較や、民間の高実績企業との比較を行うパイロット実験に参加したものもある。その結果は以下の通りであった。

 

民間部門組織との比較において、諸機関が、好成績をあげた分野は、顧客の満足度、事業結果、政策と戦略、および財源管理の分野においてよい成績を修めた…。

参加組織が民間部門に比べて成績不振だった分野は、指導力、人的資源、執行過程および雇用保護である(Chancellor of the Duchy of Lancaster, 1997, p.10)

 

オーストラリアでは、以下のように考えられている。

 

[国]際的な水準点設定は、大半の国がこれを優先事項だと考えている。唯一の可能な水準点が他国の類似した公共サービスからのみ得られるため、公共サービス活動を捕捉することが不可欠であるということが国際的な焦点となっている(Trosa, 1997, p.6)。

 

水準点設定は、公共部門が改革の過程で採用した、その他の多くの技術と同じく、アメリカ合衆国の民間部門の慣行に端を発する(Camp, 1989)。これを公共部門に応用するのが適当かどうかは、楽観主義者(Next Steps Team, 1998)と、その限界を強調する人たち(Talbot, 1997)と、公共部門の重要な部分における実用性に疑問符をつける前提条件の存在を力説する人たち(Pollitt, Cave and Joss, 1994)との間で論議されている。

 

 

 

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