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5.3.4 業務結果:産出と影響(「効果」)

 

直節で見たとおり、生産性の拡大を単一の明確な原因か、もしくは限定された数の原因に‘帰する’のは困難な場合が多い。こうした困難さは、テーマが産出に移れば、さらに大きくなる。ニュージーランドはこの好例である。ある一定の産出―マイナスであれ、プラスであれ―は、マネジメントの改革が盛んだった1982-1992年にかけて観察可能である(付表「国別資料:ニュージーランド」を参照のこと)。失業は新たな高水準に達した後、1990年代初頭に低下した。インフレーションも一度進展した後、後退した。犯罪と青少年の自殺は増加した。こうしたことは、‘マネジメント’改革の結果なのだろうか。それとも政策の変化か、もしくは外部環境の変化(世界経済の継続的な変遷)なのだろうか。また、これら三つのすべてが混合した結果なのだろうか。ニュージーランドは公共サービスを対象に、異例に洗練された実績測定制度を作り上げた国だが、それでも、これらの測定の大半はやはり出力についてであり、産出(成果)については対象外である。

 

表5.10 公共サービスと政府活動における生産性の発展

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研究の主たる成果は、フィンランドにおける〈マールムクウィスト指標〉アプローチに基づく。

出典) Hjerppe and Luoma, 1997年, p.15

 

この手の原因特定に関わる問題は、ほとんどの国にも存在する。たとえば、オーストラリアでは、マネジメント改革の1992年の評価は「新しい枠組みは、強力な支持を得ているし、全体的に顧客に対する結果を含めたAPS(Australian Public Service)の費用効果を増加したと思われる」と結論づけている(Task Force on Management Improvement, 1992, p.52)。しかしながら、より詳細に調査したところ、ここで示唆された因果の連鎖は証明されたというにはほど遠く、同じ報告の別の部分ではむしろ次のような異なる点が力説されている。

 

改革は急激な社会経済的変化の時代に行われたため、(他のものとの間で)費用や機関の実績と顧客を、こうした大規模な変化やそれにともなう政府の変化から切り離すための決定的な方法はいっさい存在しない(Task Force on Management Improvement, 1992, p.8)。

 

これは典型的な見方である。サッチャーが行った、イギリスのマネジメント改革についても、同様のことが言われているし、1980年代初頭における栄光のフランスの分権化法案やスウェーデンの分権化への多彩な努力、その他の大規模な公共部門再編成についても同じである。一方、従来知られているところでは、「経験志向の実績測定システムを開発することは、プログラムを改善するための実績測定を用いることが不可欠であることを経験が示している」(Mayne, 1996, p.8)。

 

 

 

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