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表5.1 1985-99年の政府支出の変化(対GDP比)

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出典)OECD

 

まず、各国間のパターンは、常にマネジメントの改革履歴から期待される結果に合致するとは限らない。たとえば、オランダ―ニュージーランドと同じく合意主義的な改革が行われた―は、GDP比で見るかぎり、もっと控えめな数字を達成した。一方、フィンランドはきわめて内容の濃い改革プログラムを実現した(Pollitt et al, 1997)国で、ここではかなりの‘増加’があった。

 

次に、どのような種類の「支出削減」が関与しているのかは、表に見える数字からは少しもわからない。とくに、政府支出の対GDP比の減少が効率性や有効性、質の減損をいっさい生じなかったのか、公共サービスの全体的な水準や範囲にわずかな減損があったのか、深刻な劣化が見られたのか(例えば、上述のd)とe)のタイプの削減間の違い)、なんの情報もない。「結果」がどの程度、政府活動の民間部門への大規模な移転によって得られたものなのか、あるいはその結果、市民の財布にはどんな影響があったのか―上述のhの問題―これらについても、情報はいっさいない。ほんとうのところ、こうした意味で、「支出削減」のために支払われた「価格」がいくらだったのか、これを示す各国間の比較データの、良好なセットはいっさいない。実際、こうしたデータのセットを作るうえでの方法論的な問題はきわめて大きい。

 

第三の特徴は、測定が行われた時点での経済状態によって左右されるところが大きいことである。不況になると、様々な社会的保護のための支出が増加し、税収は減少する。公共部門は大きいままだが、民間部門は急速に収縮して成長を停止する。こうした公共支出の理由から、つまり対GDP比が一般的な経済条件のために急激に変化する可能性があるとしても、このことがマネジメント改革の基本的な状態について何の意味もっていないというものではない。

 

第四の条件は、‘「因果の矢印」が反対方向によく働くことがあるため、支出削減がすべてマネジメント改革に起因すると捉えないよう注意しなくてはならない’ということだ。つまり、政府が追いつめられて、どちらかといえば恣意的な公共支出の削減を行い、公共部門組織はそのために本格的な改革の中に押し込まれたのかもしれず、その逆ではないのかもしれないということである。十ヶ国の中で最も公共部門内の生産性の変化に関する包括的な調査を行った国であるスウェーデンでは、改革が財政的に逼迫している環境下で実行されるとき、削減が改革をもたらした、あるいは少なくとも改革が生産性の上昇にかなり有効だったように見える。

 

 

 

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