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4.8 執行のモデル

 

この節では、「改革とは何か」を離れて、「改革はいかに行われるか」に話を転じる。これは直接的問題を提起する。たいていの場合、学者にとって、改革がいかに実施されているかについての体系的な情報を入手するのは、改革の内容についての情報を入手するより難しい。政府は何をしようとしているか公表するのには熱心だが、納得できることとはいえ、事態がいかに進行しているかについて、詳細な説明を提供するのにはそれほど意欲を示さない場合が多い。いくつかの執行の側面には、調査して文字にすることが難しい面もある。個々の指導者や管理者の長所や短所、改革によって簡単に生じる怨恨や摩擦、そうした怨恨や摩擦の解決策となることの多い妥協や脅迫(ジャーナリスティックな処理の方が一般的であるにせよ)などが、科学的に考察されることはめったにない。いくつかの新制度では、その成否の決定に、こうしたファクターが影響力を持つこともあることを示す状況証拠は山ほどあるが、そうした事象が厳格な検証の対象となることはめったにない。

 

外から見えのは、計画実現のためにさまざま方向や努力指令で、これこそ、ある特定の政府の、ある特定の期間における特徴のような気がする。こう言うとただの印象にすぎないようだが、懸案の、もっと系統だった、比較による証拠は掲げるに値する。

 

・改革は、どの程度‘上意下達、もしくは下意上達’で行われたのか。

・とくに改革を進める目的で、‘新しい組織と構造’がどの程度創出されたか?

・改革の‘激しさ’、すなわち改革が反対勢力を踏みつぶしながら、政府を前進させていくのか、それとも他の利害関係者(公共サービスの労働同組合など)を考慮し協力しながら、細心の注意を払って忍び足で進むのか、どちらなのか。

 

上意下達の改革と下意上達の改革との区別はそれ自体、注意して用いなければならない。二つの分離独立したカテゴリーがあるのではなくて、ある幅を持って連続する領域の二つの極であり、その中には「上意下達により指導された下意上達」が含まれている。だから、純然たる極の事例よりも、中間的な事例の方が多い。さらに、われわれが焦点を置くのは、主として中央政府である以上、中央政府の「下」を構成するものはただちに明確になるにはほど遠い。

 

こうした点に注意すれば、一足飛びに執行についての一般化に入ってもよいだろう。それは、上述の三つ局面はすべて、実際に緊密に絡み合ってきた。つまり、上意下達方式の方をより多く採用した国々は、より多くの新組織を創出するとともに「改革をより急速に押し進める傾向にあった」ということだ。さらに、「アングロ―サクソン国家でありNPM国である国がまたしても、一つの独立した集団として突出している。」改革を容赦ない速度で、新組織―それに組織の新種も―を急造しながら、怒濤のような勢いで推進するという過激な行動をとったのは、ドイツやフランスというより、合意主義的なオランダや北欧諸国というより、そして能弁なアメリカ合衆国や、もっとおとなしいカナダというより、このアングロ―サクソン国家だった。したがって、執行のスタイルの範囲は、前章で確認した政治行政体制の特徴に非常によく合致している。

 

 

 

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