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こうした、PIのもっとも野心的な使用は、―影響を評価したり、プログラムをある方向に導いたり、政策の運命決定を支援したり―、もしかすると、‘法治国家’的制度がそうした業務を消化する場合より、‘公益’主義的行政制度における公共サービス文化の場合の方がより困難が少なくてすむのかもしれない。‘法治国家’的制度は、より多くの裁量権を与えて、しかる後に結果を測定するという方法よりも、厳格な法律や規則の定式化によって行政の行動を指導しようとするためによく用いられる(Bouckaert, 1996, pp.228-9)。

 

NPM諸国は、また、PIのより‘集中的’な使用の最前線に立っている。過去20年にわたって、様々なマネジメント目的のために用いる補完的もしくは予備的情報として、―特定の判断の通知やさまざまな組織や業務の比較(水準点)、予算配分の決定、それに個々の公務員の職歴の進展と昇進にかかわる決定を行なうときでさえ―、基本的にPIを用いることから生ずる軌跡がみられるかもしれない。一例をあげるなら、出版物の成果、研究援助金および表彰・叙勲、博士号の授与などのファクターに基づいて、イギリスの大学の学部に与える研究の品質に関わるランク付けがある。この精巧な実績指標の、国家による、だいたい四年ごとに行なわれるこの苦心して作り上げた国家の調査が、今では直接的に公式的にも、各学部の基礎的研究資金の配分を決定している。この評価において「高得点」を獲得しようとすることが、大半の大学の学部のマネジメントの中核をなすようになった。要するに、PIの使用はかつては珍奇な「おまけ」であり「目新しい」ものだったが、次第にマネジメントの他の局面に統合されるようになった(Carter, 1998)。これは、公共サービスのマネジメントと、ユーザーに対するこれらのサービス志向を相当敏感ものにすることができた。またその一方で、これによって、測定の活動そのものが処理の過程を良くない方向にゆがめるという悪しき症状がもたらされる可能性もある(Bouckaert, 1995; Pollitt, 1990)。

 

最後に、実績測定の‘外部’への使用に話を転じる―部内間マネジメントの目的ではなく、立法府や納税者、サービスの利用者、それに様々な利害関係者に通知する目的で―。確認すべき点を知っている者(そのうえ、もっと重要なことには、確認することに利害関係を持つ者)にとっては、1990年代後半の公式出版物は、1980年代に比べるとはるかに多くの情報を掲載していた。イギリスの年刊誌『Next Step』や国民医療制度の実績指標小冊子、アメリカ合衆国の報告書『GPRA』、スウェーデン財務省の公共部門の生産性に関する報告書などの刊行物には、膨大な量の役に立つデータが掲載されている(Chancellor of the Duchy of Lancaster, 1997; Swedish Ministry of Finance, 1997, を参照のこと)。こうしたいくつものデータは次第に洗練され、初期の刊行物に見られた弱点やお粗末さが影を潜めるようになった。たとえば、NHSの事例では、PIの初の全国的データは使いにくく、ありがたがられず、平均入院日数など処理結果が圧倒に多かった。しかしながら、歳月を経た現在、情報の提示と解説は見違えるばかりに改良され、いまだ問題になってもおかしくない改良可能な点は多々あるにせよ、少なくとも診療成果の指標、もしくはこれに代わるものが掲載されるようになった。実績に関わる情報は、マスコミが記事として取り上げることもあるが(たとえば、イギリスの国立学校の「実績対比一覧」など)、政治家がそうしたデータを「持ち出す」のは期待を裏切るものだった(Carter, Klein and Day, 1992, p.182)。政府や議会の中には、政治家のためにPIデータの重要性と利用可能性を向上させるために、特別な対策を取り始めるところもでてきた(たとえば、カナダの事例に関しては、Duhamel, 1996)。

 

 

 

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