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オランダでは、1990年代に、実績測定を予算編成の過程と徐々に統合する戦略が実行されてきた(Sorber, 1996)。いくつかの国では、公共サービスの質の向上を求めるイニシアチブによって、実績測定の範囲の拡大がもたらされた(たとえば、1991年のイギリスの「市民憲章」、1993年のフランスの「公共サービス憲章」、1994年のカナダの「優良サービス宣言」、1995年の「サービスの優良性を求めるイニチシアチブ」)。

 

PI制度の拡大は、まず比較的簡単で有形のサービス(塵芥収集、郵便)が測定が行われ、しかる後に健康管理や教育など、もっと個別に変化しうる、より硬直してないサービスが、そして最後に政策にかかわる助言の提供や、共通した政策目標追求における、さまざまな機関と機関の間の調整など主観的な内容の、非有形かつ非日常業務的サービスが、合理的な方法で進むものと思うかもしれない(Bouckaert and Ulens, 1998)。しかしながら、そうした論理は見いだしがたい。たとえば、イギリスではもっとも初期の全国的PIスキーム(1983年開始)は、国民医療制度が対象だった(Pollitt, 1986; Carter, Klein and Day, 1992)。もっと明確に見いだせるパターンは、強力な集団は、そうでない集団より、測定の風潮が押し寄せるのを遅らせたり、その方向を逸らせたりすることができるということだ。それゆえ、健康管理の分野はも、看護婦や受付担当者の活動は、医師による診療上の判断の質に比べて、もっとずっと集中的に測定される。NPM諸国では、少なくとも、公衆は教師、警察、ソーシャルワーカー、社会保障事務担当者、専門職員の実績の測定基準を掲載した報告はたくさん読むことができるが、議員や大臣の実績測定は、あるとしても、ほとんど目に触れない(アメリカ合衆国は、少なくとも上院と下院の議員の投票と出席の傾向に関しては、この一般化に対するめったにない例外かもしれない)。

 

PIの制度はこれまで測定がなされなかった部門や組織を発見し、「治療」を受けさせるという問題にとどまらない。これまでよりももっと分析的な道具立てで行われる測定の範囲を広げる―入力や過程、規則等の遵守だけでなく、効率や効果の測定を開始する、という問題でもある。たとえば、監査担当の国家機関の多くは本書の別の部分でも触れたとおり、規則性や合法性といった問題や無駄遣いの追求といった問題だけでなく、効率や効果、サービスの品質といった、もっと複雑な概念を把握するところまで、その業務を広げてきた。こうした概念は、実績監査の分野の中心であり、1980年代半ばから急速に発展した(Pollitt et al, 1999)。測定システムの、こうした、投入や経過といった比較的世俗的な問題を越えて、もっと政治的に微妙で方法論的に困難な効果を測定するという問題に向かう動きは厄介なうえに論議を呼びやすいということが―いくつかの国で、多くの機会に―判明した。たとえば、ニュージーランドの大臣の言葉を検討すると、世界でもっとも洗練された実績測定制度をもってしても、やはりニュージーランド公務員は、その努力が行き着くところと考えられている最終的な成果(顧客の満足)を犠牲にしても、出力(=仕事量)(たとえば、諸問題を完結させること)にとらわれすぎる傾向がある。

 

ひとつの危険は、リスキーで魅力のない、それでも重要な業務が欠落したり、あるいはかつての労働組合でよくあったような馬鹿げた仕事の縄張り争いが生じることである。「出力の固定」のために部局が結果に注意散漫になったり、「契約の固定」のために実際に明確でないものなら何でも進んで無視するとしたら、これらのことがいかにも起こりそうではないか(East, 1997)。

 

 

 

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