日本財団 図書館


4.7 実績測定

 

前節から、多くの国で実績測定が増加したことがパブリックマネジメント改革の中心的な特徴であったことは、明らかである。財政や人事管理、それに組織再編成についての説明は、ある意味で、すでに取り扱ってきたので、それに相応してこの節は短くてもよいだろう。しかしながら、測定一般に関わる問題には、本節の以下で提起されるべきものがいくつかある。

 

実績測定は、明らかに新しいものではない(Bouckaert, 1994)。実際、行政そのものと同じくらい長い歴史を持っている。イギリスやアメリカ合衆国では、19世紀後半すでに、州立学校の教師の実績を測定する適切な枠組みがあった。ウッドロー・ウィルソンは、行政制度が効率に関わる基準に照らしてよく機能するように設計される必要性について書いているし、F・W・テイラーは労働者の効率測定に対する包括的なアプローチを唱導している(Dunsire, 1973)。しかしながら、これをすべて認めたからといって、この四半世紀、公共部門の活動を測定することへの関心が高まっていることを認めるのを妨げるものではない。こうした測定は、いくつかの特徴にそって、発達してきた。

 

測定は、以前に比べて、‘広範にわたり’行われるようになりつつある。以前より多くの階層が…より多くの分野が…その対象に含められている。実績測定は、以前より徹底的に行われるようになりつつあるが、それはより多くのマネジメント業務が(測定だけでなく、意思決定、支配、それにアカウンタビリティーの提供も)対象に含められているからだ。

最終的に、実績測定は、以前より‘外に’向かうようになった。内部で使用されるだけなく、立法府の成員にも使用され、国民にさえ使用される(Bouckaert, 1996, p.24)。

 

これらの特徴を、順番に見ていくことは有益である。実績測定の広がりつつある‘範囲’はNPM諸国においてもっともよく例示されているが、重要な測定イニシアチブが、カナダ、フランス、オランダ、北欧諸国、それにアメリカ合衆国で見いだされる。したがって、われわれはイギリスに目を転じて、軌跡の全体を評価することにする。

 

公共部門の被雇用者で、拡大された、実績評価計画の到達範囲を免れる者はない。目標や実績基準―病院の順番待ちリストや学校の試験結果、犯罪検挙率、大学での研究の評価など―を満たせという圧力は、公的組織に、根底を揺るがす変化をもたらした。PI(実績指標)が資源配分と個人の金銭的報酬とますます結びつきを深めているので、組織の文化と個人の行動は変容した(Caarter, 1998, p.177)。

 

実績評価が新分野に普及した例は、多くの国で見ることができる。それらはしばしば、情報技術における発展と結びついている(たとえば、Bellamy and Taylor, 1998, p.68-70)。アメリカ合衆国では、1993年の「政府実績結果法」は、連邦政府のあらゆる出先機関を対象に、効果的にPIを命じた(たとえば、Radin, 1998)。オーストラリアでは、実績測定は1980年代に広く導入され、その制度は本書を執筆中の現在も依然、新保守派のハワード政権によって厳重かつ強健にされつつある(Department of Finance and Administration, 1998a and 1998b)。ニュージーランドでは、(上述の)「戦略的成果領域」と「重要成果領域」の制度によって、広範にわたるPI制度が義務づけられた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION