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‘分権化’。大臣や高級官僚がかつて語ったところによれば、分権化とは、公共サービスの応答力を高め、迅速化し、これまで以上に地元および/もしくは個人のニーズに適合させるものである。分権化は、中間管理者層という不要な層を取り除く結果となることから、「規模縮小」を容易にする。分権化は、財務管理や人事管理に責任をとらせる、職員は職務の「重要性」が高まることで刺激を受け、満足度が高まる。こうした利益がすべてあると仮定したところで、どの国でも(それに、欧州委員会でも)、だれもが分権化に賛成らしく見えるのはちょっとした驚きである。われわれはこれから実際の軌跡について詳述するが、それが多少なりと意味を持つようにするには、分権化のさまざまな側面を分類しなくてはならないし、ある程度はレトリックと現実を区別しなくてはならない。

 

分権の概念を解体して批評する一つの方法は、分権化が、少なくとも三つの戦略的選択を内包しているプロセスだということを認識することである。この三つ選択は、表4.5に詳述されている。

 

表4.5 分権の戦略的選択

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したがって、最初の選択肢は、分権化された権力を選挙によって選ばれた政治的代表に委ねる‘政治的’分権と(たとえば、中央政府が地方自治体に権力を分け与える)、たとえばイギリス都市開発公社やスウェーデンのエイジェンシーなど、指定された団体に権力が委譲される‘行政的’分権との間の選択である。第二の選択肢は、権力が他の組織に分け与えられる際に、‘競争的’手段(たとえば、地元当局のゴミ収集サービスを対象とする競争入札)を用いるか、‘非競争的’手段を用いる(地域の保健当局がその権限のいくらかをNHS信託に移転する)かの間の選択である。第3の選択肢は‘内部’での分権(委譲の行為が現存する組織の「壁の中」で起きる)か、独立した外部組織(既存の組織か、もしくは新設された組織のいずれか)に権力が移転される‘外部’への分権かの間の選択である。認可を求めることなくXドルを費消する権限が財務担当長官(Principal Finance Officer)から、上級現場管理者に委任される場合、これは内部的分権である。メージャー保守党政権下でイギリス地方教育当局から、公費助成学校に権限が移転されたが、これは外部への移転である(だった)(Pollitt, Birchall and Putman, 1998)。

 

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