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地方政治においても、専門化の動きは明瞭だった。イギリスでは、健康管理、教育および社会福祉の分野におけるMTMs(市場に類するもの)の設立が、必然的に分離独立した購入者集団と提供者集団とに事実上の専門特化をもたらした(Pollitt, Birhall and Putman, 1998)。1979-1997年の保守党政権は、いくつかの種類の専門的教育機関(たとえばシティ・テクノロジー・カレッジやインフラの再開発組織である都市開発公社会社)、その他さまざまな特殊法人の説立を支援した。これらが一体となって、どちらかといえばぎゅう詰め状態の新環境を造り上げたが、この新環境こそ伝統的な地方自治体が対処しなくてはいけないものであった(Painter et al, 1996)。さらに、地方自治体や医療サービスを対象とする強制的な競争的入札(CCT)の過程は、たとえ契約を勝ち取った場合でさえ、たいていは他と識別可能な専門組織としてみずからを改造しなくてはならなかった(たとえば、塵芥収集や洗濯、建物のメンテナンスを専門とする組織)(Ascher, 1987; HM Treasury, 1991)。

 

要するに、一見したところ、専門化した行政のマネジメント組織がほとんどありとあらゆる場所で発展したようだ。この傾向は、これら新設組織が法律的・政治的にしばしば不確かな地位に集中していたため、国によっては批判を招いた。近年の、比較による研究論文は、これを以下のように述べている。

 

実際、準自立非政府組織(quangos =特殊法人)の成長とその使用は、地域の特殊法人から地域や中央政府まで社会のあらゆるレベルで、またアカウンタビリティーと正統性という同種の問題を反映しする新しい組織(たとえば欧州通貨研究所)が設立されたヨーロッパレベルでも、明白なことである(Greve, Flinders and van Thiel, 1999)。

 

しかしながら、増大する専門化と分権化に関連する評価は、本章で行うべき作業ではない。これは、もっと後の章、とくに第6章と第7章で取り上げる。

 

‘調整’。伝統的なヒエラルヒーでは、調整は上意下達の権力の行使によって確保される。無矛盾の整合性のある命令が、この経路を介して下りてくる。最高位の管理者を支援する中央の職員グループが、下位の提案をチェックして、それらがすべて、先任者が維持している戦略に間違いなく適合するようにし、事業部Xが事業部Yで実行中の業務と矛盾する方向では絶対に計画をたてないようにする。規則は中央部から発せられ、それらはすべて遵守されなくてはならない。新しい状況が発生すると、それらに対処するために規定の方式にのっとって規則がつくられ、それらは既存の法律と手続を組織の中にきちんと組み、その組織が組織のあらゆる部分を支配する。しかしながら、ヒエラルヒー性の強い権力だけが、調整を達成する唯一の方法ではない。調整は、手続への適合度は低いにせよ、ネットワーク内の自発的な協力によっても達成される。この形の「連帯」は、ネットワークの全成員が目標を共有しており、コミュニケーションが容易にして完全であり、かつ事業規模が控えめであれば、達成するのがもっと容易である。市場の奇跡というのは、価格メカニズムによって、大勢の生産者/売り手および消費者/買い手の行動が、中央権力による命令がなくても、調整可能になることを指す。需要と供給の「見えない手」がこの働きを行い、近代的なコミュニケーション技術と情報技術により、この働きは猛スピードで完成される。

 

それゆえ、調整はヒエラルヒー、ネットワーク、もしくは市場によって達成されるかもしれない(Kaufmann, Maajone and Ostrom, 1986; Thompson, Frances, Levacic and Mitchell, 1991年)。NPMの改革の大きな圧力は‘事実上’、可能な場合は常に、ヒエラルヒーによる調整を、市場とネットワーク―とくに市場―による調整で代用すべきだということだった。

 

 

 

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