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一言でいうなら、合衆国は、政治的体質とレトリックにおいてヨーロッパの「法治主義」モデルとは遠く隔たっているが、それでもやはり硬直していて矯正不能な(あるいは、部分的に支離滅裂な改革が行われると言うべきかもしれない)官僚制の本拠なのだ。

 

4.6 組織の軌跡

 

組織の再編成は、公共部門のマネジメント改革では、いたるところで見られる特徴である(OECD, 1994, 1995、詳細については、「付表:国別資料」を参照のこと)。これらの再編成を分類する方法は多種多様で、数も多いが、その中からわれわれが選択したのは、古典的な組織論から見てかなり「主流」の4分類系で、その区分は以下の通りである。

 

・専門化(単一目的の組織なのか、多目的の組織化なのか)

・調整(職能、レベルおよび部門が異なる場合、その間の調整は、いかなる手段で達成されるべきなのか。)

・中央主権化/分権化(中央集権化/分権化の機能とは何か。また、その程度はどれほどなのか。)

・規模(組織にとって、どれくらいの最規模が最適なのか。)

 

これらの特徴のそれぞれを、順番に取り上げるが、最初にさっと全体を概観しておくことは有益である。広く一般化するなら、オーストラリア/ニュージーランド/イギリスの改革が目指したのは、より専門化した組織であり、権力のヒエラルヒーではなく、市場メカニズム、契約関係もしくはこれに類似した関係を手段にした調整であり、(ヒエラルヒー的にも地理的にも)中央から周縁部への権力の分散であり、官僚制の中の大規模機関の分割もしくは縮小による公共機関の規模の縮小であった(Boston et al, 1996; O'Toole and Jordan, 1995; Peters and Savoie, 1998)。専門化と細分化へと向かう傾向は、カナダ、フランス、オランダでも認められた(とはいえ、NPM諸国に比べると、その程度は少ない)が、フィンランド、ドイツ、スウェーデンおよび欧州委員会ではほとんど見られない。これらの国々では、それぞれ、その中央政府もしくは指揮命令の構造は、細分化や「廃止」が限定的か、もしくは皆無であった。合衆国はすでにかなり細分化され専門化した行政制度を持っていた(「付表:国別資料:アメリカ合衆国」を参照のこと)ので、制度全体を進化させて、より整合性を持たせようとの試みがなされた(たとえば、政府実績再検討法による共通の会計手続き、共通の報告手続き)。分権化については、これに賛成しない者はほとんど皆無であるかのように見えるが、以下からわかるとおり、われわれは本書では扱わない。以上四つの特徴について、続けて検討していく。

 

 

 

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