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一つの部局もしくは機関内から〈上級職〉に登録するということは、団体交渉による賃金規定から外して個人的に決定する報酬へと移行させ、および書面による役務提供契約を承認させるという手段によって、その対象者を選び出すことである(Prime Minister et al, 1994, p.37)。

 

この種の制度は通常、なんらかの形式の実績連動賃金によって補強される(オーストラリアでも合衆国でも、特別待遇の者を雇っておくために、一般公務員の賃金制限を回避する方法となることともまた意図された)。本書の選んだ十ヶ国の大半は、実績連動賃金の実験が実行されたし、その他の国で行われたが、結果は往々にして期待を裏切る結果が混じっているか、あるいは失望するものであった(Gaertner and Gaertner, 1985; OECD, 1993b; perry and pearce, 1985)。このパターンはNPM諸国で(それに、この件については合衆国も)一般的となり、もっとも広く用いられたし、北欧諸国やフランスではもっと用心深く、限られたプロジェクトが行われた(Vallemont, 1998)。これに加えて、最低限の経歴を持つ外部者の導入と高度で集中的なマネジメント訓練プログラムの提供により、最低線の能力が向上する可能性がある。それゆえこの軌跡の利点は明白だが、不都合が生じる可能性もある。男女を問わず「イエスマン」の数が増加する危険性、および「率直で豪胆な」助言をする者の昇進の可能性と安定に対する危険性が、NPM諸国のいくつかで明示された。

 

4.5.4 統一された国家サービスの一部

 

この場合、きわめて少数の国だが、人事権の分権化に対して攻撃の矛先が向けられた。当初は個々のスタッフの日々の日常的なマネジメントという理由だったが、次第に、きわめて広範にわたる諸条件もまた理由となり、最終的には業務執行部門のマネジメント責任者は担当部局の諸条件に合わせて設定された諸条件において雇用や解雇ができるようになり、実際上のあらゆる目的のために統一された公共サービスという考え方が廃棄された。こうした変化の方向は多くの派生的効果を生んだ。賃金、労働時間、必要な資格、懲戒と解雇の手続き―これらすべてに加えて、まだ多くの事項が、国のマネジメント担当部門と組合指導者による交渉の対象から外され、組織、地域もしくは業務別に分権化された。この新しい哲学は、イギリスの1994年の白書で、次のように簡潔に述べられている。

 

まったく同一の行政機関は二つとないというのは、官民を問わず二つの組織がないのと同じである。賃金=等級制度は、その他マネジメントに関わる取り決めと同様、個人の諸事情と該当する労働市場とに適合すべきだというのは理にかなっている(Prime Minister et al, 1994, p.26)。

 

オーストラリアでは、イギリスにおけるのと同様、統合された公共サービスの外側の殻だけは保たれたが、1997年の公共サービス法によって、以下の通りとなった。

 

報酬と雇用の諸条件を決定するのは、部局の長および省庁の出先機関の長である。今後、法律はもはや常勤か、非常勤かという根拠で、公務員を区別することはなくなった。公務員をいかに雇用するか、いかなる契約条件とするか、を決定するのはこれらの長であり、職務を指定し、責任を移譲するのも彼らである(Shergold, 1997, p.34)。

 

 

 

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