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ある方面では、公務員は一生涯、一つの職に就いているものと信じられている。これは該当しない。上級職の場合、過去7年間に、現行の上級職オープン制度〈Senior Open Structure〉を去った個人の50%以上が通常の退職年齢以前に退職した。その退職者の30%が自主的であれ、強制的であれ、早期退職を通じたマネジメントを介してもたらされた(Prime Minister et al, 1994, p.43)。―問題の政府は当時、典型的な、上級職員の25%削減を初めとする、中央省庁の数の過激な小規模化プログラムに着手したところだった(HM Treasury, 1994を参照)。

 

しかしながら、その他の国では、変化はもっと控えめだった。カナダやフィンランド、フランス、ドイツ、スウェーデンでは、上級公務員の大半が長い経験とよく安定したネットワークを持つ、キャリアの「高級官僚」である(たとえば、Bourgault and Carroll, 1997)。フランスは、多分この集団のなかの他の国々とは相違している。同国のグランド・コープス(grand corps)と呼ばれる‘高級官僚’の成員は、しばしばその職を去って実業界に職を求めるし、それゆえ修道院と同じくらい厳格な官僚制というそしりを受けるはずがないからである。合衆国は、これまた事情を異にする。合衆国では、上級公務員職(Senior Executive Service)の成員はこれまでずっと厳密な意味で専門家である傾向にあったため、どんな場合でも、自分たちの大勢の仲間が政治的に短期間だけ役職に就くシステムの範囲内で働くことを余儀なくされてきた(Kettl et al, 1996, p.56; 「猟官システム」については、付表の国別資料:合衆国を参照のこと)。

 

4.5.3 先任性と資格による昇進

 

ここで、異動は、個々の具体的な目標と優先順序が記載されている年次契約もしくはこれに類似した契約に、必要とされる結果を盛り込むことにより、昇進を結果と責任に結びつけることになった。通常、変化は部分的なものにすぎなかった―先任制と資格は依然として総合的な吟味の要素であった―が、公務員を特定の、かつ通常は短期的な目標にもっとしっかり専心させようという意図は明確だった。この新しい重点の置き方は賃金を昇進と同じく、結果の達成度における「成績」に結びつけることにより、強化される場合が多かった(以下の、4.5.4を参照のこと)。

 

多数の国で起きた、より重要な発展は、ある種の形の上級職を創出したことである(オーストラリア、ニュージーランド、および合衆国―Ban and Ingraham, 1984; Boston et al, 1996, pp.117-20; Halligan, 1996b, pp.86-7。イギリスでは保党政権が、書面による契約を基礎に雇用される「上級管理集団」を好んで用いた(Prime Minister et al, 1994)。この手の集団は様々な利益をもたらすはずだった(「はずだった」というのは、いずれの事例においても、当初の宣言通りの目標を達成するのが恐ろしく困難だったからである)。基本的にSESは(各国とも、力点の置き方はわずかに異なるが)、公共サービスの頂点に、これまで以上の流動性と柔軟性、それに応答性や、マネジメントにおける有能さを備えた集団を創り出すことを意図していた。SESは、準備があれば公務員の通常の職階の外部から有能な執行責任者をスカウトすることを容易になるし、契約の諸条件には政治行政機構内での水平的な異動が含まれる(「競走馬が競馬場を周回するのと同じである」。応答性が高まるのは、適切な人間が適切な場所に、適切な時に配属されるからでもあるし、昇進の意図するところが先任性や前例より、達成した実績を持つ「仕事のできる」人間を対象とするところにあるからでもある。イギリスの保守党政権は、これを以下のように表現した。

 

 

 

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