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公務員として我々は、民間部門に革新を促したのと同じ畑を歩き、同じ青空を見つめなくてはならない。その中心となるのは、われわれの雇用制度を、オーストラリアという国に普及させる必要があるということだ。われわれは、独占地位と適切さを欠く監視によって保護されているが、少なくとも今よりも倍も高価だとわかっているマネジメントへのアプローチを守ることができると実際に誰が信じるのだろうか(Shergold, 1997, p.33)。

 

この引用に見られる要素―達成すべき基準としての民間部門の設定価格、経費節減の強調、公共サービスの、過度の保護された安楽な状態―に注目してほしい。これを額面通りに受け取るべきではない。たとえば、上述の三つの顕著な特徴の普及率と影響とを誇張するのは簡単だ(たとえば、イギリスの公務員のうち終身在職権を持つ職種は多くはないし、一般に低賃金だし、昔から、事務職では特に、特別な訓練を受けてない公務員やパートタイムの公務員を抱えている)。それでも、やはり、職務中にお茶は飲むし、おそらく能率的な労働者でないだろうが、安定しているうえに潤沢な年金に恵まれるという、世間に流布している典型的な公務員像は、特に新保守派のマスコミが報道したり政治家が描写したりする像にほど遠いわけではない。精力的で剛腕という、誇るに足る伝統的な公務員を抱えるフランスでさえ、一頃は「社会的成功のモデルだった公務員は、単なる浪費と無能の権化という、おぞましい労働者像と化した」と言われた(Rouban, 1997, p.150)。一般にオーストラリアやニュージーランドに比べて、合意主義的かつ漸進主義的な政治行政制度をもつオランダでも、1990年代初頭には、政府職員の身分の「正常化」策が採られたし、1992年には公務員の一般年金資金民営化の合意がなされた。

 

したがって、ここで示した三つのカテゴリーは、容易に改革の重点的対象となった。どの事例においても、NPM諸国の傾向は、公務員職の特徴を減らし、―それによって、他部門の職との類似性を高めることであった(『Dunleavy and Hood, 1994』や『Hood, 998』で用いられた表現によれば、「集団」を慎重に弱体化する)。

 

4.5.2 終身在職権を保証された特殊技能職

 

変化の方向は、専門的訓練を受けたキャリアといわれる特殊技能職の地位の安定を低下させて職員の流入と流出を促進することにより、公務員の「終身在職者」の比率が徐々に低くなり、別な方法を経験したことのある職員の比率が次第に高まるようにすることだった。NMP諸国おける典型的な発展は、官公吏の長(とくに下部機関の長官。だが、場合によっては各省庁の大臣)の任命を2年、3年、5年の実績と関連づけた契約にすることだった。その場合、上級公務員〈the Senior Executive Service〉のメンバーは全員(以下の、4.5.3を参照のこと)、5年の任期終了後は再度志願しなくてはならないが、ただし省庁の大臣は、その在職期間の延長を認める規定という特権を持っているため、この限りではないする(『Boston, 1996, pp.117-20』。イギリスの大臣は、以下のように、みずからを評している。

 

 

 

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