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これらの大半の方法は、同じ範囲の改革志向によって特徴づけらける(Farnham, 1996)。政治家は、公務員に対して、これまで以上に、柔軟で、敏感で、結果を得ることに専心し、練熟した技能を持ち、できればこれまでより少人数である(したがって、これまでより経費が少ない)ことを望む。一方、公務員はこれらの要求の中には嫌悪を感じないものもあるにせよ、現行の特権と保護を保持しようともする。公務員は明らかに、余剰労働力の強制的解雇をともなう激甚な規模縮小は望まないし、給与凍結、その他民間部門との比較においてみずからの重要な報酬をさらに浸食するような措置もまた望まない。国(フランス、欧州委員会)によっては、組合の地歩を強く固めみずからの出仕の基本条件が浸食されるのをくい止めるために、長く苦しい闘いを戦いぬいた国もある(Howard, 1998)。また、構造的な保護がすばらしく完備していたため、政府が過激な変化をもたらそうにも不可能だった国もある(ドイツ連邦公務員のように)。その他の国々では、抵抗勢力がそれほど強く組織されていないために、抜本的変革が遂行された。たとえば、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスでは、終身在職権の確保が減少した。またオーストラリア、フィンランド、ニュージーランド、イギリス、合衆国では、相当の規模縮小が行われた(統計の解釈には注意が必要であるが)。一つの共通する特徴として、人事面での変化は、たとえ行われたにせよ改革案件のトップにくることは滅多にないことがあげられる。改革を行った国に共通しているのは、財政管理、組織構造、マネジメント技術といった点で―そうとう距離が隔たるにせよ―刷新が行われたということだ。この点、オーストラリアも外だったわけではない(少なくとも、アングロ・サクソン国家の中では)。

 

財政管理は、1980年代の改革プログラムでは著しく優勢だった。1980年代後半はこうした重点の置き方の限界が次第に認知されるようになり、それが取るべき方向を拡大するとともにマネジメント過程の財政上の問題への従属を削減する圧力となった。その他の形のマネジメントの必要性も次第に主張されるようになり、1990年代末から人的資源の管理も目に付くようになった(Halligan, 1996b, pp.102-3)。

 

いちばん簡単なのは、「基本事例」について変化の軌跡を詳述することだ。この基本事例はきわめて一般的で、‘法治国家’にも公益主義の国々にも適用される(第3章第6節)。この基本事例では、公務員は以下であるものと仮定される。

 

・終身在職権を持ち、専門的訓練を受けた官職―政治家や公務員である一人の上司の時の気まぐれだに左右されることはない(とはいえ、極端な職務怠慢や犯罪的行動があった場合には、退職させるのは困難ではあるが可能である)。

・主として資格と先任権との関係で昇進する。

・各種の条件(国の給与体系など)においては、国の明確で特定の枠組み内で、統一されている。

 

上記はすべて、公務員であることと民間部門の職にあることとの間に一線を画する特徴である(とくに1970年代から1980年代にかけて、両者の相違は拡大した)。また上記の特徴は、少なくともNPM諸国では政治家にも公務員にも一様に要求するのが流行となっている責任の拡大と効率の向上を阻むものと見られるようになった。オーストラリアでは、公共サービス監督官(Public Service Commissioner)が、『1997年公共サービス法』の趣旨を説明して、以下のように語った。

 

 

 

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