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表4.2 予算の軌跡

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その他の国々は、表4.2の最下行に見える国に関する限り、それほど進展しなかった。オランダ政府と合衆国政府は、予算関連資料の構成を変更し、また、(基本的な資料についても、付属の資料についても)、10年もあるが、20年の資料が一般的であったのに比べてはるかに多くの実績情報を掲載するようにようにした。ドイツの連邦政府と欧州委員会もまた変更を行ったが、こちらの方はもっと控えめな変更だった(タイプI)。本書を執筆中の現在、欧州委員会では「活動別予算」の導入がさかんに論議されているが、この始めての努力は主として複雑な部門横断的な会計を構築することにあるように見える。この新方策は、新しい方法で既存の情報を陳列するものだが、それ自体、実績マネジメントを奨励するにはなんの効果もなさそうである。

 

予算関連の改革から、会計システムの近代化に話を移せば、各国の軌跡にはだいたいにおいて類似したパターンがあることに気づくだろう(表4.2)。ここでもオーストラリア、ニュージーランド、イギリスが、合衆国やオランダとともに、もっとも遠大な変更を達成したかに見える国々という範疇に入るが、その変化はそれほど大規模だったわけではないし、ドイツや欧州委員会では目に見えるような変化は極めて小さかった。これには、三つの立場がある。一つ目は伝統的な現金ベースの会計システムであり、二つ目は複式簿記への移行であり、三つ目は発生主義会計(accrual account)の開発である。

 

本書は公会計を保持するうえでのさまざまな規準について徹底低位に説明するものではない。われわれは三分類の基本要素だけを指摘するにとどめる。純然たる現金勘定においては、公共事業体は、まず現金べースで計算された予算を与えられ、次に予算を超えて支出したり(予算を超える支出は実際問題としては違法かもしれない)、支出が予算に満たなかったり(支出が予算に満たないということは、政治的レベルにおいて、それほどの金額は必要とされないため、次年度には削減するという結論に達してほしいと頼むようなものである)しながら、それぞれの現金支払いの記録を残し、その金を支出していく。たとえば、欧州委員会では、支出額のどの一部も、まず法的にどうか、次にプログラムに準拠しているかどうか、そして三番目に支払い可能かどうかについて、三人の分離独立した職員が承認する入念な現金システムを用いている。これは、フランス嫌いの多くの国々において、ここしばらく用いられている伝統的なシステムである。このシステムで問題なのは、システム自体が能率性や経済性に対してインセンティブを与えないことである。これでは、年度内に割り当てられた金額を安易に支出することことになってしまう。高額の支出は最後の数週間に集中する。たとえば、EUの職員は、少なくとも支出の効率化と効果について気をもむのと同程度に、「使途」(すなわち、割り当て金を支出する能力)について心を悩ませているように見える。

 

 

 

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